表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貴女が信じてくれるなら  作者: ひなた
諦めと恐怖
75/106

第四話

 どちらなのかしら。

 罠が仕掛けてあるから、余裕の表情をしているのか。罠を匂わせる為に、罠もないのに余裕の表情をしているのか。

 確信を持てない限りは、美咲を行かせる訳にはいかないわよね。

 でもだとしたら、この状態でずっとにらめっこを続けていようっていうの?

 もしかしたらそれが狙いなのかもしれないわね。

 時間を稼いでいるのかしら。ここで足止めをしていて、私達が見つけられ捕まるのを待つ。

 戦って時間を稼ぐよりも、会話により時間を稼いだ方が、言葉巧みな軍師には合っているものね。

 さっぱりだわ。天才軍師が何を考えているのかなんて、理解しようとする方が馬鹿みたい。

 どうしてそんな表情を浮かべていられるのよ。

 敵を前にしているのだから、貴男だって絶対的な安全の中にいる訳でもないのに。

「ゆきたん? どうしたのさ、ゆきたん」

 美咲の戸惑った声で、私はやっと気が付いた。

 無意識のうちに、彼の方へと歩みを進めてしまっていたらしい。

 武器も持たない私が。美咲や明ほどは、力も持っていない私が。

 罠があるのか調べる為に、捨て駒として、試しに翔の方へと向かっているの? いえいえ、誇り高き私がそんなことをする訳がないじゃない。

 でもそれだったら、なんで私は危険を承知しているのに、翔の方へと歩いているのかしら。

 ゆっくりではあるけれど、確かに一歩ずつ近付いている。

「待て! 止まれ! 雪絵?!」

 驚いたように、父上が叫んでいる声が聞こえた。

 耳には入っているのだけれど、頭には入ってこないようだった。

 誰の声も、私の声すらも、今の私を止めることは出来ないのかもしれない。

 だって私は臆病者の筈なのに、翔の方へと吸い寄せられてしまっているのだから。

「お仲間の為に、ボクを殺す汚れ仕事は請け負うということですか? 素晴らしい友情ではありませんか。ははっ」

 翔の目の前にまで行くと、やっと私の足は止まってくれた。

 そんな私のことを、翔は鼻で笑った。

 しかし少し勘違いをしているように思う。仲間の為にって、私はそんなことをする性格ではないわ。残念ながらね。

 端くれながらも、一応は私も軍師なんで。性格は良くないわよ、優しさなんてどっかに行っちゃった。

 本当に美咲の為だけにしか動かないもの。

 美咲を守る為ならば、とはいえ自分で行くのは嫌だから、明にでも命令するんじゃないかしらね。

「殺せませんよ。気持ちではなく、優しさでもなく、物理的な意味で。だって見て下さい、私のこの華奢な体。どこぞの誰かとは違って、私はか弱い女の子ですから」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ