五話
笑顔の私を見てか、美咲はそんなことを問い掛けてくる。
でも表情に出ちゃうんじゃ、私も軍師としてはまだまだってことかな……。もっと真面目な顔して、真剣過ぎるくらいの表情で言えばよかったわ。
「それでは行きましょう。敵を騙すにはまず味方からとも言います。誰にもばれないように抜け出して、敵に奇襲を掛けてやりましょうか。さすがに私達だけで全滅まで追いやることは出来ないかもしれませんが、じきに気付いた軍が来るでしょう。それで一気に踏み潰してしまいますよ。それで宜しいですか? 姫様」
真剣な表情を出来る限り意識して、冷静冷徹っぽく私は言った。それっぽくする為に、美咲のことを姫様だなんて呼んじゃってさ。
「え、うん。それじゃ行くよ。ゆきたん、とっても楽しみだね」
本当に楽しそうな顔をして、美咲はくるくると回っている。
「場所は問題ありません。それでは姫様、私の後を着いて来て下さいね」
盗賊の奴らがどこを拠点に村人を襲っているか、その情報も提供して貰っている。
まあ折角私達が任せて貰ってるのに、大将ったら情報も兵もくれ過ぎだとは思うけどね。貰ったものは使わないと勿体無いわ。
「金を出せ! そうすりゃ殺さないどいてやる」
私達が見事抜け出して目的地を目指していると、運良く盗賊が村人を襲う現場に遭うことが出来た。
「ちょっと、なんてことしてるのよ」
どうしてやろうかと私が考えてるうちに、美咲のそんな声が聞こえて来てしまった。
私が気付いたときにはもう遅く、盗賊たちの標的は美咲へと移ってしまった。
「可愛いお嬢ちゃんじゃん。随分物騒な格好してるけど、どこの子だい」