表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貴女が信じてくれるなら  作者: ひなた
逃げ惑い
59/106

第四話

「今よっ! 行きなさいっ!!」

 やっと私は翔が何をしているのか分かったわ。

 彼のトリックも見つけたし、彼の隙だって読めた。

 だから私は確実に安全な時を見計らい、走り出せと号令を出した。

 少し驚いたような表情はしたけれど、私の声を聞いて美咲は全速力で走り出す。暴れ回っていた明もそれに続いた。

 凛については、驚いているという様子はない。

 戸惑っているという様子もそこまではない。

 私や美咲とは違って、凛は大人しく城内で勉強をしていることが多かった。あまりに真面目で勤勉過ぎた。

 真面目に勉強をしていたからこそ、このような場面では足が竦んで動けなくなってしまうのでしょう。

 そんな彼女の気持ちが私は痛いくらいに分かったから、その手を掴んで全力で走り出した。

「しゃがんでっ!」

 今や私は全てを見抜いたといっても過言ではないわ。

 天才軍師と言ってもこれくらいか、このような子供騙しに引っ掛かり掛けていた私が恥ずかしい。そう思えてしまう程度だわ。

 一度仕組みが分かってしまえば、攻撃の順や罠だって全て分かるわ。

 私の指示に従って皆が動いてくれていたから、ちゃんと攻撃を避けて逃げ続けていることが出来た。

 ただいくら私だって、父上を唸らせた天才軍師の罠がこれだけだとは思っていないわ。

 私みたいな子供に見抜かれるとは思っていなかったでしょうけど、他にも沢山の手を用意している筈だわ。

 くれぐれも油断だけはしないで、警戒心は解かず美咲を守る為だけに逃げましょう。

 早く城を、街を取り返したいって、取り返さなくちゃいけないって、そうはどうしても思ってしまう。

 でも慌てたりすると、決して正しい判断なんて出来ないわ。

 いくら経験値の低い私だって、それくらいは経験で分かる。ゆっくりと慎重に、確実に目的を達成させる為に。

 全てを取り返すのは、もっと力を付けてからの最終目標よ。

 とりあえず、いますることはただ一つ。

 生きる、ということだけ。

 自分が生きる為に、愛弟子を生かす為に、仲間を生かす為に、そして何より大切な美咲に生きて貰う為に。

 今はその為だけに、プライドなんて捨てて走り続けるの。

 無様に逃げ続けるの。

 確かの戦おうと思えば、あれくらいの量ならば相手も出来るかもしれない。

 しかし実戦経験の少ない私たちだから、訓練は積んでいると言えども、どこかで怪我をしてしまうかもしれないわ。

 疲労だって溜まっていくでしょうし、無駄に戦うのは良くない。

 戦いは出来る限り避けなければいけないわ。特に、殺したりするなんてことは。

 無意味に人の命を奪いたくない、なんて生易しいことを言いはしないわ。敵は敵なんだから、私はそんなところに情けを掛けたりしない。

 ただそれでも、凛の気分を悪くさせてしまうのは、私だって望まないわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ