表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貴女が信じてくれるなら  作者: ひなた
全て失って
53/106

第十二話

「生きましょう。優しい皆には難しいことかもしれませんが、相手ではなく自分を優先として下さい。自分が生きる為に相手を殺せるくらいの人でないと、生きることすら叶わないようですよ」

 奪って来たものを並べながら、私は冷たくそう言った。

 分かっているわ。美咲も凛も明も、優し過ぎるのよ。三人とも本当に優しくって、それが失われることなどない。分かっているわ。

 それでももっと自分を大切にして欲しいと思い、私はそう言った。

「覚悟は出来ているつもりよ。国を取り戻す為、あたしは戦う。邪魔するならば斬り捨てるのみ」

 私の言葉に、美咲はそう返してくれた。そして凛も明も頷いた。

 出来ればこんな言葉、美咲に言わせたくなんてなかった。

 それでもこうなってしまっては、美咲にも覚悟して貰うしかない。だから私は満足気な笑顔をして見せた。

 だって軍師となるものだから。

 卑怯や非道と言われようとも、自らの意見を貫くのが軍師だから。何があっても冷静に最善の行動を考えるのが、軍師なのだから。

「今日にもここを発とうと思います。殺してしまったあの二人、彼らが帰らないことを敵は不審に思うでしょう。そして二人が私たちに殺されたと気付いたのならば、どこに捜索へ向かったのかを調べ、私たちの場所が分かってしまいます。だからそれまでに、出来るだけ遠くへ逃げるとしましょう」

 お金は十分にあるし、宿に泊めて貰うことも可能だわ。明日は馬を調達し、遠くへ遠くへ逃げることだけを考えましょう。

 どうせ街を去るのだから、遠慮はいらないわね。最後にもう一度略奪かしら。

「さすが先生です。南へと逃げてはと思うのですが、いかがでしょう」

 軽い称賛の後、凛はそんな提案をする。

 梶原家が治めていた地から北へ進むと、この山がある。更に北へ進めば街があると、今日初めて知った。

 しかし凛はそちらではなく、反対に南へ逃げようというのだ。南へ行けば、当然香山に奪われた故郷へと戻ることになる。

 それなのに南へ行きたいというのはなぜか、私は凛に問ってみた。

 単純に考えて良いならば、目を眩ませる為などその程度のことよね。

「東へ進めば香山の本陣があります。それも一つの策かとも思いますが、まだリスクが高過ぎます。北へは、香山の兵ももう向かっているでしょう。その上、北の成田なりた家は香山家と親交が深いと聞きます。逃げ切れるとは考えられません」

 初めてよね。凛がここまで自分の意見を言うなんて。

 立派になったんだな。成長したんだな。そう思ってしまい、本当に師匠らしくなっている自分が笑える。

 こんなことを考えている場合じゃないわ。一生懸命に説明してくれているのでしょうから、最後までしっかり聞いてあげようじゃないの。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ