表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貴女が信じてくれるなら  作者: ひなた
全て失って
51/106

第十話

 無表情と冷静は違う。凛はそう言っているけれど、無表情の方が有利に決まっているの。

 だって考えてもみて? 完全に怒りをぶちまいて暴れているのより、無表情のまま暴れている方が明らかに恐怖を感じるでしょう。

 そう言うことなのよ。

 凛はなんだか、何を考えているかわからないところがあるし、無表情は役立っているわ。

「兵士でもいいわね。兵隊さんの意地悪には逆らえないでしょ」

 性格の悪い笑みを浮かべると、私はゆっくりと小屋を出た。

 きっとあれは香山の兵。姫がこちらに逃げたと知り、追い掛けて来たと言うことかしら。ここまで迫っているなんて、危ないわね。

 まあ相手が香山の兵ならば、商人を襲うよりも罪悪感は薄れるわ。

 会話の内容を聞く限り、私たちの場所を絞れている訳ではない様子。こんなところに来ている訳がない、なんて笑っている。

 これだったら、殺さなくても武器や鎧、金なんかも渡してくれそうね。

 ただ万が一に報告されても困るし、やっぱり殺しておくしかないかしら。こいつらを殺してしまえば、この山に私たちがいると言う可能性が上がってしまう。

 けれどそれも致し方なきかな。長居するつもりは無いのだから。

「ごめんなさいね」

 小さな声で謝ると、私は二人組の一人を後ろから抱き締める。そして驚き見惚れている隙に、私は彼の剣を奪った。

 多少の罪悪感は感じながらも、二人の首を同時に刎ねた。

 何も理解出来ず、倒れて言った可哀想な二人。落ちたその首は、驚愕でいっぱいであった。

 血が溢れて来るけれど、そんなものを気にしてはいられなかった。血くらい、別にいくらでも見たことがあるわ。今更恐れることもない。

 血塗れになる前にその体を起こし、鎧を剥ぎ取った。それを身に纏うと、剣を鞘に戻し私は準備を完了する。

 持っていた限りのお金を盗むと、一旦小屋に戻り後の処理を明に任せる。

 美咲は姫なのだし、彼女にそれを任せるのは可笑しいと思った。そして凛は血が苦手、それを知って頼むほど私は鬼じゃない。だから明も嫌だとは思うけれど、お願いした。

 嫌そうな顔一つ見せず、彼は笑顔で頷いてくれた。

「それじゃ、行って来るわね」

 お腹が空いて仕方がないから、とりあえず食料を入手しないといけないわ。

 ゆっくりと眠れた筈なのに、疲れは全然取れていなかった。あまりにも体が怠いので、何かに呪われているとすら思った。

 それでも私は山を滑り降りて行き、麓の街へと辿り着いた。

 知らなかったわ。

 あの小屋へは行っていたけれど、その先へと進んだことはなかった。私の国へ帰る道は、かなり億劫だし辛いもの。

 でも反対側へは、こんなに簡単に滑り降りて行けるなんてね。そしてそのすぐ傍に街があるなんて。

 今までの私の世界が、いかに小さかったかを思い知らされるわね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ