第八話
「馬鹿にしないで? その知らない街の知らない人々が私に何を出来るのよ」
そう言うと、簡単に美咲は納得してくれる。本当に私の力を信じてくれているようね。
そしてその期待に応える為に、私は頑張らないといけないわ。美咲を決して悲しませはしない。
「ゆきたんなら大丈夫、それは分かってる。でもちょっと、心配じゃん」
可愛い。私が美咲の可愛さに見惚れていると、二人が帰って来てくれた。
「嫌な場所だった。本当に皆暗くて、姫様の城とは比べ物にならない場所」
笑顔で明はそう言うと、入手品を全て出してくれたようだ。
一枚のコイン。たった、それだけであった。そりゃそうだよね、そう簡単に物を恵んで貰えるなんて思っちゃいけないわ。
今までは街に出れば、おじさんたちがお菓子とかをくれた。
それは大将が頑張ってくれていたから。そして、美咲がその娘であったから。
きっと余所者であったら、あの素敵な街だとしてもお菓子なんか恵んで貰えないわ。そんなのを可愛がっても何にもならないもの。
「警戒心も高くて、盗みなども困難だと思います。僕は元々向いていないのでするつもりもありませんでしたが」
確かに凛には向いていないと思うわ。
出会った頃から、無表情さを考えたらかなり犯罪者向けな子だと思っていた。それでもかなり素直過ぎる子だから、絶対に向かない。
賢いのに騙され易いような、変わった子なのよね。
「困っている人を救って歩いていると、一人だけお駄賃を下さったのです」
さすが、やっぱりいい子たちよね。
私の発想は、詐欺とか盗みとか暴力とか犯罪ばかりだった。それなのにこの子たちは、人を救うことによりお礼を求めていたのね。
その上お礼を強要はしないのだから、いい子過ぎて困るくらい。
「稼ぐのは私に任せて。もし私を知る人がいたとしても、商人をやっているとは思わないでしょうから問題ないわ。商人衣装を用意するから、少し待ってね。買い物は二人に任せる」
衣装を用意すると言っても、私は二人みたいにいい人は出来ない。
道行く人を襲い、服を剥ぎ取る。序でに金目の物もね。
そしてそれを縫い合わせ、私であることが分からないような作りにすればいいのね。まずこの可愛過ぎる顔を隠すことが最低条件かしら。
ここまでの美貌があれば、ばれてしまうものどう頑張っても。
「了解です。お役に立てず、申し訳ございません」
謝るけれど、凛は悪くないわ。私が優秀過ぎてしまっただけよ。それと、凛は人が良すぎるのね。




