第七話
作成したものを私たちが使うか。それとも、それを売って金にするか。そういうことなのよ。
他にはない発想の物を作成出来れば、それはかなり使えると思うわ。なんだそれっ!? と、一度敵に大勝利が出来る。
一回披露してしまえば、対策を取られてしまうかもしれないけれどね。
売るんだったら、斬新さは必要ないでしょう。
むしろ、少し詐欺臭くてもいいのよ。一瞬でも、無知な民を騙すことが出来ればいいだけだわ。
そして金さえ手に入れれば、その後はどうでもいいの。くれぐれも私たちが梶原家の者とはばれないように気を付けないといけないけどさ。
美咲や先代の名を汚す訳にはいかないもの。
「役に立つものを作って、あたしが最高の使い方をしたい。って言いたいけど、売った方がいいんじゃないかしらね」
なんだか、無邪気で少し我が儘な美咲はいなくなってしまった気がする。
以前のような笑顔を浮かべながらも、少し大人になってしまっている。美咲にはいつまでも子供でいて欲しかったのに。
「商売ならば、悪いけれど美咲には留守番していて貰うわ。むしろそれなら、私が一人でやる。自分の才能に溺れる訳ではないけれど、詐欺師には向いていると思うの」
賢いと言うよりは、狡賢いと言った方が私には似合う。そんな私は、軍師や参謀よりも詐欺師が適任だわ。
演技力があるとは言わないけれど、嘘を真しやかに語るのは出来る。
幼い頃から悪戯をしてきたからかしら。人を騙すのは大の得意なの。
「詐欺はだめだよ、犯罪だもの」
悲しそうな表情で美咲はそう言う。
その哀しそうな表情が、私は何より悲しかった。だって美咲の表情は、純粋無垢な頃の表情と違うから。
「逃亡者がよく言えたものね。もう既に指名手配された大罪人のようなもの、それなら逃げるだけ。逃げる為の手段なんて、選ぶ必要はないわ」
素直に私を正しい道に戻そうと、注意してくれた美咲。
彼女の優しさを確かめる為、私はわざと罪を犯そうと相談してみたりした。彼女が本当に、それを止められるか試すように。
そして美咲はその全てを乗り越えてきた。
しかしそんな無邪気な彼女を、アイツは奪い去ってしまったんだ。許せない。
「気を付けてね? 別に知らない街の知らない人々、知ったこっちゃないわ。それでも、ゆきたんがいなくなっちゃうのは嫌だからさ」
こんなところは、昔の彼女のままだと思った。
仲間には温かく、優し過ぎるくらいの美咲。しかし以前より、敵と見做した者には冷たかった。




