第四話
「いつまでもここにはいられないわ。いずれ見つかってしまうものね」
急に表情を真面目なものに変え、美咲は意見を求めるように言う。
私を信頼してくれている。
そのことは勿論嬉しいわ。それでもまず、美咲の考えを聞くのが先ね。
確かに今は時間がない。
でも、だからって全て私が決める訳にはいかない。それだと美咲も成長出来ない、しさ。
「これからどこへ向かいましょうか」
こんなところにいたら、見つからなくても飢え死にしてしまうわ。
それを考えたら、どこかの街に行くのがいいかしら。
とりあえず、そこまでは美咲も考えたらしい。
「街に潜みながら、武器とかを収集するなんてどうかな。宿や料理店もあるでしょ」
潜むと言っても、美咲の顔くらい知られているわよ。そして我が国が滅んだこと、もう広まっているでしょう。
そうすると、近くの街はまず不可能。
だって逃げた姫を匿っているなんて、ばれたらどうなるのよ。自分がリスクを犯すほど、私たちを大事に想ってはくれないでしょう。
つまり、近くの街では追い出される。悪ければ、香山の野郎に売られるかもしれないわ。
しかし遠くの街なんて、辿り着くだけでも困難だわ。
その間、何にも襲われないと言う保証はない。無闇に動けば、捕まってしまうかも。
それに食料だって持たない。徒歩では、きっと急ごうにも体力や足が辛い。
「それならば、近くの街へ僕と明殿が向かうのはどうですか。お二人とは違い、顔を知られておりませぬがゆえ」
私と美咲を順に見て、凛はそんな提案をしてくる。
そうね。凛や明の顔までは知らないでしょう。美咲はともかく、私だって知っている人は少ないくらいでしょうね。
しかし私が行ってしまう訳にはいかない。
美咲の傍で、私は美咲を守らなければいけないから。
凛がいるならば、知力は問題なし。彼女は計算が得意だから、得する買い物が出来る筈。
明がいるならば、武力も問題なし。彼は力があるから、襲われても大丈夫。荷物を運ぶにも楽じゃない。
「いいわ。気を付けて行って来なさい」
きっと美咲は断ろうとしていた。
しかし私の表情を一瞬見て、首を縦に振った。
二人で街へ行くことを許可したのだ。
「行って来ます」
そう言って、凛はぺこりと頭を下げる。そして彼女は去って行ってしまう。
それに続いて、明も去って行ってしまった。
「二人とも、ちゃんと帰って来てくれるわよね」
去った二人が見えなくなると、寂しげに美咲は呟く。実に悲しそうな表情で、美咲は呟いていた。




