第三話
私が目覚めたときには、もう日が昇ってしまっていた。
そして凛と明はもう既に起きている様子。ただ美咲は隣で気持ち良さそうに眠っていたけれどね。
「明、ちゃんと眠れたの? 大丈夫よね」
全員疲れていたのだし、目覚めてくれなかったと言う可能性もある。
それならば、明が一晩中見張りをしていてくれたことになるわ。
「俺なら問題ないぜ。姫様がすぐに交代してくれたんだ」
美咲が? ぐっすりと眠っているようだったけど、私より偉いじゃない。
話を聞くと、凛も見張り番をちゃんとやったらしい。つまり、全く見張りをやらずに眠っていたのは私だけ。
提案者の私がそれだと、まるでサボる為に提案したみたいだわ。
「少量ですが、食べ物を持って参りました。これは姫にお食べ戴きたいのです」
すやすや眠る美咲を見て、凛はそう言った。
そんなの当り前だわ。何があっても姫を守る姫に不自由させない、それが私たちだもの。
「そこでお願いがあるのです。僕たちはもう食事を取ったと言う設定にして頂けませんか? そうしないと、姫はお食べ下さらないと思うのです」
そうね。美咲だったら、きっとそうだわ。
一緒に食べよう。そう言って聞かなくなってしまう、それではいけないの。少ししかないのだから、少しずつ美咲の何日か分にしたいわ。
少しずつ、私たちの一日分ではない。
「ありがとう。美咲のことをそこまで想ってくれて、ありがとうございます。明もお願いしますね」
私の言葉に、凛は当然と言うように頭を下げる。明は笑顔で頷いてくれる。
本当に大切な仲間を手に入れたわ。全てを失っても、取り戻せるとすら思えてしまった。それは仲間がいるから、優しくて優秀で美咲を想ってくれる仲間がいるから。
「皆、もう起きてたんだ。おはよう」
少しすると、眠そうな目を擦って美咲が目を覚ます。
一応姫だから。と言った感じに三人で跪き挨拶、そして凛は美咲に食事を出した。
それは、城では見たこともないほど少なくて。美味しくなさそうで、今は欲しかった。
「姫のことを待たずに食事をしてしまったこと、お詫び申し上げます。味は悪いですが、我慢してお食べ下さいませ」
確かに目覚めるのを待たないとか、失礼よね。先に謝罪しておかないといけないわ。
明がキョトンとしているから、彼にも頭を下げさせ私も頭を下げる。
「さっすがりんたん、ご飯持って来てくれたんだ。ありがとっ」
優しい美咲はそう笑い、よく味わって食べていた。きちんと堪能しているようだった。
しかし量が量なので、すぐになくなってしまう。
「ごちそうさまでした。美味しかったよ。お腹いっぱい」
それでも美咲は、優しくそう笑ってくれた。




