十話
「覚悟しなさい!」
美咲は剣を抜き、その少年に斬り掛かって行く。武器を取ったらいけない、そう教えたのに。また殺してしまうつもりなのかしら。
と思ったら、その少年は驚きながらも美咲の攻撃を弾いた。手拭いを落とし、少年はなぜか顔を隠す。ふざけているけど、美咲の強さを知らないのかな。殺されても知らないわよ? 真剣に闘ったらどうかしら。
「……っ」
平気で少年は美咲と闘っている。微妙に美咲の方が押しているけれど、少年はまだ本気を出していないように見える。もしかしたら、美咲よりも強いのかも。
「退いて下さい! 早く」
だとしたら不味いわ。美咲が負ける筈がない、そう思って止めなかった。でも美咲より強いんだとしたら、すぐ戦いをやめさせないと。もし美咲に何かありでもしたら大変だもの。
それに、興味深いわ。あれほどまでに強い相手、野放しにしておくのは勿体無い。必ず手に入れてみせるわ。
「武器を捨てて、闘う気がないことを示すのです」
姫がこんなところに来ているなんて、夢にも思わないでしょう。だからわざわざ殺したりしないと思うわ。
それに、殺気は全く感じないもの。こちらが武器を降ろせば。
「ゆきたんなんで? でも、ゆきたんがそう言うんだったら」
いい子だから、不満そうにしながらも美咲は剣を鞘に戻す。
「素晴らしい武芸ですね。名前は何というのですか?」




