六話
「どうして? 会ったばかりじゃないの。なぜなんですか」
調子が狂わされたわ。でも私も、凛のことを信じているのかしらね。
心を許しているのでしょう。だから無意識に敬語すら使わなかった。普通だったら、もっと緊張して会話する筈だもの。
何を言うにしても、もっと気を付ける筈だもの。
今まで、美咲以外には敬語で話し続けてきた。実の父に対しても、ずっと。
それなのに、どうして私は……。それほどまでに凛のことを信じているというのかしら。
それだったら、でもなんでこんなに不安なんだろう。悪い子には見えないわ、心から私を慕ってくれているように見える。そして、私も信じている。心は信じているみたい。
それなのに、頭は信じてあげないんだ。どうしても疑ってしまう。
分からない。信じたいんだか信じたくないんだか分からないよ。はあ、こんなの初めてだわ。
こんなに乱されること、初めてだわ。
「先生、敬語など使わなくて結構です。僕はその方が嬉しいですから。それに、先生は先生なんですから」
そんなこと言われたって、分からないわよ。
でも、本当に私を信じているのかもしれない。それなら、本当に私が信じてもいいんじゃないかしら。
分かんないよ。私の表面を好んでいるだけかもしれない。だったら、敬語で離し続けないと。イメージとの差に失望してしまうと思うから。




