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貴女が信じてくれるなら  作者: ひなた
プロローグ
31/106

四話

 予想外の答えだった。

 私の発想では、絶対に辿り着くことの出来ない答えだった。

「ここが嫌いなのですか? この国が……っ」

 でも許せない。

 美咲の父が作り上げた、この国をバカにするなんて。それは、私も許したくなかった。

「いいえ。そうゆう訳ではありません」

 私の様子を見てそう言ったのだろうか。

 それとも、また私とは全然違う発想で? しかし、ここまで異なっていれば話を聞くのも面白いわ。

 それに、五月蝿くないしさ。バカでもないしさ。

「この国を嫌うのではありません。この世界を嫌うのです」

 つまり凛は、つまり凛は私と規模が違うということね。

 国だなんてそんな小さくはないと? 世界単位で嫌っているなんて……。

「でも貴方、世界なんて知らないでしょう? 私だって国から出たことはありません。貴方はあるのですか? この国から出たことが」

 世界を嫌う。

 そんなことを言えるほど、世界を知っているのかしら。そんな筈がない、そんな筈がないわよね。

 世界を知る筈がない。所詮人間だから。

「ありません。この国から出たことはありませんが、世界を読んだことならあります。そして、どこの国も大して違いがないことを知っています」

 そんなことないわ。最高の国も、あるかも知れないじゃない。

 本とは違う。広い世界には、もっと素敵なところがある。

「本物を知らないのでしょう? だったらこの世界を嫌うのはどうかと思います」

 その私の言葉にも、凛は無表情で首を横に振った。

 冷たく、冷たい表情で。

「いいえ。そんなことはありません。だって僕はまだ、生きる楽しみを見つけていませんから。先生と出会えて、きっと楽しい思い出も出来ると信じていますが」

 暗いわね。凄い暗いわよね、この子。無表情の理由わけ、といったところかしら。

 でも過去がないなら、私のものにしやすいわ。そんな取り方も出来る。

 すべて私色に染めてしまうんだ。

 そう。まるで、洗脳でもしているように……。

「まだ若いのに、どうしてそんなことを仰るのですか? それに、生きることが楽しい筈がないではありませんか。だから、楽しみを探す物語です。人生は」

 凛だって、本が好きならば分かる筈じゃない。そう、本当に本好きだと言うならば。

 例外なく、どんな物語も好むべきだわ。

 人生という物語だって、楽しむべきじゃない。確かに面白いものではない、大半は辛いことばかりだけど……さ。

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