三話
相手が感情的になっているときには、自分は冷静にいないといけない。
私までそうなってしまっては、話を聞いてあげることもできない。受け止めてあげることもできないんだもの。
だから私は、いつも以上に冷静でいないといけないと思う。
「取り乱してしまい、申し訳ございませんでした。先生の前であのようなお姿を」
「私の質問が聞こえませんでしたか?」
凛の謝罪に対しても、私は冷たく対応した。
冷静に? いいえ、というよりも冷たく対応したと言った方が正しい筈ね。
「父親を嫌うのですか? そう問い掛けたのです」
失ってもまだ、父親の大切さというものが分からないのかしら。
どんなに嫌いだって、どんなに最低だと思ってたって。どんなに恨んでたって、どんなに消えろと望んでいたって……。
実際に消えてしまっては、寂しくなってしまうものでしょう。
私のような天才とは違う。可哀想な凡人たちだって、失えばその大切さに気付くものではないのかしら。
「好む理由がありません」
もしかしたら、その父親のせいで凛は感情を? そこまで傷付いているのね。
でもそうだとしても、親には感謝すべきだと思うわ。どんな親だって、子のことを想ってくれてるのは確かだと思うから。
「その父親がいなければ、貴方はここに存在していないのですよ? それでもなお、感謝しようという気持ちはないのですか」
私のこの言葉にも、凛は静かに俯くだけだった。
肯定しかねる。そう言ったところでしょう。
「怨むべきことではありませんか。あいつのせいで、僕は生み出されてしまったのです。こんなところに……」




