二話
「先生に出会えていなかったら僕は死んでいたことでしょう。盗賊によって殺されるか。盗賊に囚われて自殺するか。そのまま一人で餓死するか。それに、両親が生きていたとしても死は避けられませんでした」
どうゆうことだろう。
両親がいて、盗賊に襲われることもなくて。だったら死の理由? 病気とかかしら。
でも病気なんだったら、私に出会ったところでどうしようもないわ。
私に治すことは出来ないもの。名医でも何でもないのだから。それに、医者くらい親なら用意する筈だわ。
「全てに恵まれている先生には分からないことですよ」
褒められているのよね、これ。
だって恵まれているって言われてるんだもの。でも、どうしてもバカにされている気がしてならないわ。
この私がバカにされるなんて、そんなの有り得ないことなのに。
どうゆうことか分からなかった。考えたくないけど、私はその程度なのかしら。その悔しさをお茶によって流し込む。
「あんなくそ親父、死ぬべきだったんだっ!」
素直に私は驚いた。
凛がこんな汚い言葉を、凛がこんな大きな声を。そして何より驚いたのは、凛の表情が大きく変化していたことだ。
ずっと表情の変化は殆どなかった。
でも今の凛は、怒りに満ちた表情をしていた。
「父親を嫌うのですか?」
だから私は、いつも以上に冷静でいないといけないと思う。




