十七話
「ありがとうございます! 頑張ったら、僕も先生みたいになれるのでしょうか」
少しだけ、凛の表情が動いたわ。
そこまで嬉しかったって言うの? 無表情な子に嬉しそうな表情をされると、案外私まで嬉しくなってくるものね。
この子、やっぱり可愛いわ。私が頑張って育てるだけの価値もあるんじゃないかしら。
「私は厳しいから、相当頑張らないとなりませんよ? それでも頑張れますね」
本当は嬉しいのだけど、私は先を歩くことでその表情を悟られまいとしていた。
こんなに慕って貰えるのは、嬉しいに決まっている……。
子供と言われてきた私にとって、先生なんて呼ばれるのは正直嬉しい。かなり嬉しい。大人ぶっちゃう年頃だからこそ、子供のように喜べた。
でもその表情を見られるのは嫌だった。
だから、早歩きまでして前を歩いたのだった。俯かなくても、ニヤニヤしているのがばれないように……。
「はい、努力を怠ったりなどしません。先生のような方に教えて貰えるのは、僕だけなんですから。特別となれた僕が、努力しないでどうするんですか」
罠にでも嵌めようって言うの? そうでもない限り、ちょっと言い過ぎなんじゃないかしら。
私を調子に乗らせて、凛は何をしようとしているのよ。
騙せないなんて、本当は嘘なんじゃないの? 全てを騙しているんじゃないかしら。
だって、だって可愛いんだもん。
凛が可愛くて可愛くて仕方ないんだもん。