十六話
偶々、ですか……。まあいいでしょう、そんなことどうでも。
「何を教わりたいのですか? 私も教えられないものはあります」
いくら神のような才能を持った私でも、苦手なことくらいはあるわ。
それでもその辺の人よりは優秀よ。だけど、凛に教えられるほどではないかもしれないわ。もしかしたら、だけどね。
「人の、騙し方です。それと、人の疑い方です。もう騙されるのは嫌なので」
子供っぽくとか言ってなかったかしら。そんなの教わっても、子供っぽくなんてなれないわよ。
「僕はどうしても人を疑うことが出来ないのです。だから、騙されてばっかりで……。でももう、そんなのは嫌なんです。僕はもっと賢くなりたい、先生のように崇められる程の人になりたいんです。僕も頑張りますから、お願いします」
騙されてばかり? へえ。
でも人を騙すだなんて、誰がそんなことをするのよ。その辺のところのその辺の人は、そんなことをしたりはしないものね。
う~ん、疑い深いのは性格よね。賢くなったからって、素直じゃなくなる訳ではないわ。勉強をいくらしても性格は変わらない。
意図的に性格を変えることなんて、中々できることではないわ。
「分かりました。私なりに頑張ってみようかと思います」
優秀な素材だとは思うから、努力は勿論するけどね。
私以外にも、一人くらいは天才が必要だからね。