十五話
「子供っぽく行動して、子供として可愛がられてみたいのです。だから僕、正直姫が羨ましいですね」
そんなの羨ましがるなんて、どうして彼女は大人びているのかしら。
普通に民として育っているのなら、美咲よりも子供っぽくて当然だわ。いい歳して子供のように動いて、子供のように騙されてくれるわ。
「そう思っている時点で、十分子供ではないかと思いますよ。しかし、どこで勉強なさったのですか? 私に教わる必要などなさそうですが……」
どこかでものを教わってでもいない限り、この落ち着いた態度はとれないでしょう。
「家で勉強をしてはいましたが、少しだけですよ。ほんの少しだけです」
ほんの少し、ねえ。様子を見る限りは、そんな風に見えないんだけど。
「仕事の手伝いをしながらも、少し本を読んでいただけですよ」
本を読んでいた。ってことは、少なくとも文字を習ってはいるのね。
本物のバカは、文字も読めなくて書けなくて。本気で話にならなくって困るもの。
「どこで? 家に本が置いてある、どっかの金持ちでしょうか」
そこそこのところでないと、本なんてありすらしないんではないかしら。
だって、どうせ読めないんだもの。持っていたって仕方がないわ。
「いえいえ、そんなことはありませんよ。偶々本があっただけです」