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ブルーベントレー

 パリとストックホルムは、飛行機で、そう遠くないけど、ジーザスは、来年一月の全豪オープンに向けてのトレーニングで、忙しく、私は、音楽院の勉強で、お互い忙しくて、当分会ってる暇がない。


 でも、きっとノエルには会えるわ。


 ノエルには、パリの街はイルミナシオンで輝く。それを、ジーザスと見るのが、楽しみなの。




 パリで住む所は、ドミニクに、探してもらった物件で、私は見に行くこともしないで、決めた。


 私の出した条件は、家具付きで、ピアノがベーゼンドルファーだってことだけ。



 ヴァイオリンの名器が、ストラディバリウスやグゥアルネリだとすると、ピアノの名器は、ベヒシュタイン、スタンウェイ、ベーゼンドルファー。



 モナコの私の家のピアノは、ベヒシュタインで、ビーチホテルのラウンジのピアノは、スタンウェイだった。


 ベーゼンドルファーも、一度、じっくり弾いてみたかったの。





 でも、引っ越してみて、びっくりした!


 広い!この部屋数は何?それに、すごーく広いお庭がついてる。大きなバラ園に、噴水に、あずまやがある。あちらこちらに、見事な大理石の彫刻……。



 そこは、パリ郊外の元子爵家のお屋敷だった。



「何ですか!こんな広いところ借りて!私一人じゃ、掃除しきれませんよ!」


 ………アンナが、怒ってる………。



 一緒に、パリに来てくれることになったけど、もうご機嫌ななめだわ………。



 プロヴァンスより、いいところなんかないから、パリには行かないって言ってたアンナだったけど、パリに、ジーザスが来るわよって言ったら、気が変わったらしく、私にくっついてきた。


 ノエルには、ジーザスにごちそう作ってあげるって、今からはりきってる。


 結局、ジーザスめあてだ……。それだけじゃないけど。




 アンナの気が変わった理由はもう一つ。


 最近、ずっと独り身だった、アンナの40代の息子が、結婚した。


 お相手は、パリに長く住んでいた、元為替のディーラーのバツイチのマダム。アンナの息子より、だいぶ年上らしい。


 成功して、少し早めに引退して、プロヴァンスの村で、悠々自適の生活をするべく、引っ越してきた。


 さっそうと、ポルシェに乗って、プロヴァンスの田舎道を行く彼女に、アンナの息子は一目惚れ。


 猛烈アタックの末に、彼女と結婚した。



 でも、生まれてこの方、ずっとアンナのいいなりだったのに、今では、奥さんのいいなりになってるのが、アンナは面白くない……。



 ………まあ、どんな理由でも、アンナがいてくれれば、心強いわ。少々…うるさいけど。




 アンナの怒りはすぐ、おさまった。


 不動産屋が言うには、メイドも庭師もすぐに手配できるそう………。


 良かった。これで、アンナに、ぶーぶー言われなくてすむわ。


 アンナには、お料理だけ任せることにした。




 それなのに…、またぶーぶー言ってる。


「パリの市場マルシェには、コルジェットがない!」



 アンナが言ってるのは、プロヴァンス産のトマトみたいな丸い形のズッキーニのこと。あれがあるのは、プロヴァンスだけだったみたい。


 パリのコルジェット(ズッキーニ)は、細長いやつばかり。くりぬいて、ファルシーにできない!って、うるさい…………。




 でも、勝手にメイド頭になっちゃって、あれこれ、采配をふるってる。


 ほっ………。これで、私には、うるさくしないわ。




 10月。


 エコールノルマル音楽院が始まる。


 私は、コンサーティストのための高等過程に、編入する。7ヶ月間から、16ヶ月間で、卒業すればいい。10月の始めに担当教授と話し合って、何ヶ月で卒業するか、話し合って決める。


 だいたい一年ぐらいで、卒業しようかな、と悠長に考えていたけど、事情があって、最短の七ヶ月間で、卒業することに、プログラムを組んでもらった。かなり、ハードな毎日になるわ。


 早く卒業して、再来年のスクリャービンコンクールの準備に専念したいっていうのも、あるけど、もっと切羽詰まった理由ができてしまったの。





 パリに来てから、私はもう、愛車のフェラーリ・ディーノには、乗らなくなった。


 代わりに、ストックホルムのジーザスから贈られた、運転手付きのベントレーのブルーのコルニッシュに乗ってる。


 ディーノに乗ってると、私は飛ばすし、ボディはアルミで出来てるから、もっと安全性重視の車に乗ってって、ジーザスが、泣いて頼むから………。



 ベントレーが来る前の日、ジーザスから電話があった。


「ロールスにしようかと思ったけど、ベントレーは、後ろの収納スペースが大きいから、こっちにしたよ。そのうち、いろいろ積むだろ?ベビーカーとか……。とにかく、時間を作って、一度、そっちへ行くよ!」


  「いいのよ。あなたが来たからって、すぐ生まれるわけじゃないんだから。私も課題をこなすのに、手一杯で、会えないわ。予定通り、ノエルに会いましょう。」


「お願いだから、徹夜とかしないでよ。それから、ヒールは低めのはいて!それからカフェノワールは、カフェインが………。」


「ああ、もうそんなこと、アンナにたっぷりお説教されてるんだから、同じこと聞きたくないわ。じゃ、ノエルにね。」



次回は「ノエルのごちそう」です。ちょっと、疲れたんで、一週間ぐらいお休みします。ムーンライトで、「マグダラのマリア」をUPしたので、そっちもよろしく♡ 短いので、完結してます。


あっちのジーザスもジーザスだけど、別人です。


ヒロインの少女時代の「東京編」も、ぼちぼちアップしてます。


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