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覗いてはいけない部屋

作者: 小桃 綾

しいなここみ様の『してはいけない企画』、参加3作目です。

勢いだけで書きました。

思い付いてる人は他にもいるはず。

 親友の美沙が一日だけマンションの一部屋を貸してくれるというのでお邪魔することになった。


 彼女の豪華なマンションの部屋にぜひとも住んでみたかったのだ。

 物理的に高い部屋から下を見下ろして

「愚民どもが」とか「人がゴミのようだ」とか

「虫けらが這いつくばっておるわ」とか言ってみたかったから。


「置いてあるものは動かさないでね。ゲーム機は好きに使っていいわよ。蛇口も好きにひねってね。猫とも好きに遊んで。スマホも見ていいし、オ・ナラもしていいわよ。カブトムシを放たれるのは困るけど、鏡は見てもいいし、笹門 優にツッコミ感想をつけられてもべつにいいし、ダジャレも言い放題よ」


 私を連れて、美沙は貸してくれる部屋を説明してくれた。


「いい部屋ね……」


 私は心からの感想を言った。


「一日とはいえ、こんな部屋で生活できるなんて……、お姫様みたい」


 褒められて美沙は嬉しそうに微笑んだ。しかし次には真剣な顔つきになると、声を潜めてこう言った。


「ただ……一つだけ注意してね?」


「え?」


「隣の部屋は覗かないで下さい」


 美沙はまるで海外旅行にでも行くみたいな大荷物を身の回りに出現させると、入り口が開いている隣の部屋に入って障子を閉めた。


「えっ、なんで障子!? この雰囲気の部屋で障子??」


 フローリングの床に障子という、あまり見かけない組み合わせに驚くが、これがブルジョワ感覚かもしれないと無理やり納得することにした。


 窓の外を見下ろしたりゲームしたりしてしばらくすると、隣の部屋から、コトッ、コトッ、パタンパタンと、物音が聞こえてきた。

 不規則でリズム感のない物音に、私は隣の部屋が気になってしまった。


 間を隔てているのは障子だが影も何も見えない。


「覗くなって言われたから……しょうがないか」




 私は障子を勢いよく開けてズカズカと隣の部屋に入った。

 そこで見たものは──


 しゃがみ込んでフローリングの床一面にドミノを並べる美沙の姿だった。

 いきなり入ってきた私に驚いたのか美沙は持っていた牌を落とし、かなり長く並べられたドミノがキレイに倒れていく。


「あぁぁぁ! 覗くなって言ったのに!」


「覗いてないよ。堂々と入って見てるだけ」


「一休さんかっ!」

 美沙に怒られながらも一緒にドミノを並べ直す。


「ねぇ美沙、なんでドミノ並べてるの?」

「・・・何となく」


 最初の部屋では収まらずリビングも使って列を繋げていく。二人で黙々と並べ、凝ったギミックも相談しながら組み込み、明け方には並べる牌が尽きた。


「並べ終わったね。最初のスタート、押していいよ」


 いつもお世話になっている美沙。

 お互い恩返しとか気にする間柄じゃない。


 それはその親友、美沙からの、ささやかなプレゼントだった。

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― 新着の感想 ―
なるほど、これは確かに覗かれたり入ってこられたりしたら困りますね。 その後は二人で並べ直したのでしょうか。
テンプレ使って書いていただけると『とても読みやすい』『アレンジポイントが面白い』というメリットがあることに今回、気づかされました。 美沙が出かけてないことには気づいてたけど、いつも出かけてるから読み…
なるほど、トンチだ。 そしてよく見てみたら美沙が出掛けてなかった! 今までのパターンから、ワタシは脳内補完をして読んでいたらしい。 美沙、きっと「一休さんかっ!」のセリフで、ドミノを倒してるよな。 …
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