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9話 地球のピンチ

「ま、まさか……地球を守る側が少なくなったから、これを機に悪の組織が暴れ出した……ということなのかね!?」


 大都会のビルの上。ミルとレキトが見つめる中で、マジ博士はスマホを片手に大騒ぎしている。


『そんな感じだよ博士!暴れている理由は多分だけど僕のせいかも!』


「ピンキくんのせい?」


『悪の組織はみんな何故か、僕を探し求めているみたいで……「いたぞ!ピンキだ!」うわっ!?来た!?』


「あっ!ピンキくん!……駄目だ、通信が途絶えてしまった……」


 スマホは最後にブツリと音を立て、それ以降は音が一切聞こえなくなった。マジ博士は肩を落としてスマホから視線を逸らした。


「……どうやらピンキくんは、悪の組織に追われているようだ。街が妙な空気に包まれているとは思ったが、まさかそんなことになっていたとは……」


「悪の組織がピンキを?ピンキの中にある「バッテリーを作る技術」が狙われてるのか?」


「いや、違うと思う……」


「ま、待ってください!」


 レキトとマジ博士がやり取りする中、ミルが慌てて横槍を入れる。


「確かこの星にはメタルメダルマンっていう正義の味方がいるんですよね?こんな状況で、メタルメダルマンは今どこに……!」


「……多分だが、我々が来る前に悪の組織にやられたんだと思う」


「ええっ!?」


 マジ博士の一言にミルは目を丸くして驚く。


「今のところ、この星に巣食う悪の組織は三つある。「魔界軍」「猿群れ」「メカニカルガム」。各自で最終目標こそ違うものの、「世界征服」は共通している」


「みんな地球を手に入れようと躍起になってるんだな?」


「そうそう。目的の為なら乱暴な真似をする、悪どい連中さ。もちろん、彼等が動くたびにメタルメダルマンが毎回止めに入るんだけども……」


「今回は三体一斉に動き出したから、メタルメダルマンは対応し切れなかったんだな」


「レキトくんの言う通りだね。それに悪の組織は皆、毎回計画の邪魔をしてくるメタルメダルマンを嫌っていたからね……」


「悪の組織はメタルメダルマンを前に一致団結し、三対一で倒してしまった、と……」


「そのようだね……恐らく彼らはそうしてメタルメダルマンを倒し終えた後、とある目的の為にピンキくんを追いかけ回しているようだ」


「追いかけ回すって……じゃあ、この三つの組織を倒さないと、安全にピンキさんを救出できないってことですか!?」


「そうなるね……」


 ミルの言葉に、マジ博士は力なく頷く。


「ピンキくんは今、敵を錯乱させる為に位置情報を誤魔化しているようで、大まかな位置しか分からない」


「うーん……つまり、悪の組織を倒してこの場を安全にして、改めてピンキさんを迎えに行く……という作戦で行くということですね?」


「そうなるけども……」


 そう述べるマジ博士は何故か気乗りがしないのか、微妙な表情を浮かべている。


「よし!じゃあ作戦の為にも、悪の組織に対抗できる力が必要になりますね!」


「……悪の組織はどれも巨ロボットを使うんだ。彼らに対抗するにはこちらも巨大ロボットを作らなくては……しかも相手は沢山のロボットを起動させている、生半可なロボットでは太刀打ちできない……」


「あるぞ」


 マジ博士が困っていると、しばらくずっと無言だったレキトがここで声を上げた。


「レキトくん……」


「……マジ博士が妙な顔をしてる理由は何となく分かる。気付いてるんだろ?この悪の組織の騒ぎはどうも罠くさいってな」


「罠?レキトさん、それってどういう……」


「まだ分からない。でも今は、ピンキを無傷で救出するために、先にアイツらを無力化するしかないだろ」


「そうだね。とりあえずまずは、邪魔者を何とかするのが最優先だ」


「……マジ博士、心配するな。何かあっても俺が全部何とかしてやるから」


 不安が残るマジ博士に対し、レキトは優しく言葉をかける。


「レキトくん……ありがとう」


「私も参加しますよ!レキトさんには見劣りするかもしれませんが、私だって魔女なんですから!」


「ミルくん……」


 二人の頼りになる言葉を貰ったマジ博士は、真剣な顔で改めて二人に向き合った。


「……ミルくん、レキトくん、頼む!私の大切な家族であるピンキくんを助け出すために、私に力を貸してくれないか!」


「勿論だ!ここまで関わったんだ、最後まで面倒見てやる!」


「私もですよ!大切な家族と聞いたら尚更無視できませんよ!絶対にピンキさんを助け出しましょうね!」


「あ、ありがとう……!」


 二人はマジ博士の依頼を快く引き受け、マジ博士は心から感謝の言葉を述べた。


「さてと……あの悪の組織に対抗する為にも、マジ博士の仲間としても、色々準備しないとな。二人とも、一旦地球から引き上げるぞ!」




 数十分後……




 元の世界で準備を済ませた三人は、すぐさま地球に戻ってきた。


 だが、ミルとレキトの衣装が先程とガラリと変わっていた。


「随分と派手な衣装ですね……」


 ミルとレキトは、マジ博士に合わせたマジシャンのような衣装に着替えていた。


「俺達はマジ博士の部下として手伝うんだ。こういうのは一体感というのが大事だからな、とりあえず衣装をマジ博士のやつと揃えてみたんだ」


「よく一瞬でこんなの用意しましたね……」


「衣装を作る装置があったからな。それさえあればあっという間だ」


 ミルは羽があしらわれた可愛らしくもカッコいい衣装を、レキトはタキシードを基にしたと思われるヒーローっぽい衣装を身につけていた。


「見た目だけじゃない。アイテムだって抜かりはないぞ!」


 レキトはポケットから謎の球体を取り出しながら決めポーズをする。


「……レキトさん、その丸いやつ何ですか?」


「惑星破壊爆弾」


「えっ」


「地球を容易に爆破できる惑星破壊爆弾だ。悪の組織がこぞって世界征服を狙ってるなら、こっちは征服できる世界を質に取る」


「ちょちょちょ!ちょっと待ってくださいよ!それって地球上の人間も人質にしてませんか!?流石にそれは……!?」


「大丈夫。これはあくまで脅しだ、本当にやるわけじゃない」


「脅しにしても、悪の組織より遥かに悪どい真似しないでくださいよ!」


「レキトくん、最悪の事態を上回るような提案はやめたまえよ……」


「大丈夫だ、もしコイツをうっかり爆破させたとしても、俺ならその気になれば地球人を星ごと蘇らせることができる。安心してくれ」


「うっかりで爆破する可能性のあるモン持って来んな!!!!」


「待て待て待て!やめてくれレキトくん!せめてその爆弾だけは置いて行ってくれないか!」


 レキトの爆弾持ち込みをミルとマジ博士の二人がかりで必死に止める。


「……爆弾は駄目か?」


「駄目だよレキトくん!人には優しく!」


「人に迷惑かけまくっていたマジ博士が言っても説得力はないですが……マジ博士の言う通りですよ。レキトさん、流石にそれはやめてあげてください」


「……分かった、とりあえずこの脅しは無しにしよう。これは最終手段にする」


「頼むから安全な場所に置いてってくれたまえ!」


「大丈夫、ここが一番安全な場所だ」


 とんでもない爆弾をポケットに収納するレキトを、マジ博士は泣きの混じった叫び声で必死に止める。


「レキトさん、まさか他にもこんな爆弾のような危ない物を持ってきたんじゃ……」


「これ以外は安全だぞ。多用は出来ないが、この懐中時計は特に便利だ」


「時計……?」


「それってどんな力があるんですか?」


「これは時を巻き戻せる「時戻しの懐中時計」だ」


「えっ」


「文字通り、この時計のりゅうずを回すと時が巻き戻るんだ。もし最悪な展開になった際、この時計で最悪な展開が起こる前まで時を巻き戻せば、その時計の通りに時が巻き戻るんだ」


「はぁ!?つまり好きに時間を巻き戻せるってことですか!?何ですかそのとんでもアイテムは!?」


 レキトの説明にミルは声を大にして驚く。


「まあ制限は色々あるし、多用はできないがな。あとは、人同士でなおかつ魔力を持たない奴とでもスムーズに会話ができるようになる翻訳機、そして巨大ゴーレムを呼び出して使役する装置。他にも色々持ってきたが……まあ、状況に応じて出していく感じだな」


 ミルとマジ博士は何とも言えない表情で、淡々と手持ちの道具の説明をするレキトを見つめる。


「最初の二つが衝撃的過ぎて他のアイテムが霞んで見えるんですけど……これ、大丈夫かな……」


「私、もしかしてとんでもない人に助けを求めてしまったのでは……?」


 とんでもない道具をさも当たり前のように出すレキト、そんなレキトの様子を見て不安に駆られるミルとマジ博士。


「マジ博士……」


 そんな中、ミルは暗い表情を浮かべながら隣にいるマジ博士の方を向いた。


「私達、無事に生きて帰れるといいですね……」


「ミルくん!不穏なことを言うのはやめたまえ!」

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