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8話 地球へ

「えーっと、つまり……マジ博士の母星である「チキュウ」って星の近くで、助手のピンキくんとはぐれたってことですね?」


 マジ博士の説明により映像の内容を理解したミルは、今回の目的を改めて述べる。


「そのようなのだよ……急いで地球に戻り、ピンキくんを探さなくては……!」


「地球に行けばピンキは見つかるんだな?よし!それならば急いで地球に行くぞ!」


「いや、地球に行こうにも宇宙船が無くては……」


 マジ博士は窓の外にある、クレーターの中央に沈む謎の球体をじっと見つめる。


「宇宙船……ああ、マジ博士が乗ってきたスイスイとかいう乗り物ですか」


「スイスイスペース4号だよミルくん。地球までかなり距離があるからね、宇宙船のワープ装置でも使わないと一生辿り着けないのだよ」


「でも、宇宙船はだいぶ壊れてるみたいですね」


 ミルも窓から外を見つめ、壊れた宇宙船をじっと見つめる。


「宇宙船には自己再生機能があるからね、あれでもだいぶ直っている方さ」


「自己再生機能……?」


「宇宙船本体が壊れた部分を勝手に修復してくれるのさ。でもあのままでは飛び立てない。私自らの手で修理しなければならないねぇ……」


「あ、それなら大丈夫だぞ」


 宇宙船を見つめて落ち込むマジ博士に対し、レキトがいつもの調子で言葉を述べる。


「ん?レキトくん、それはどういうことかね」


「俺、過去に宇宙空間を簡単に行き来できる装置を作ってたんだよ。だから地球の位置さえ分かれば、それ使ってすぐ地球に行けるぞ」


「本当かねレキトくん!?」


「ホントホント。二人とも、俺について来てくれ」


 レキトはそう言って大広間から退室し、ミルとマジ博士は素直にその後を追う。


 レキトは豪勢な階段を降り続けて地下室へと移動し、長い廊下の突き当たりにあった重そうな金属製の扉の前で停止した。

 扉には「宇宙」と書かれているようだ。


「よっと。二人とも、入っていいぞ」


 頑丈で重そうな扉を軽々と開けて先に室内に入ったレキトは、ミルとマジ博士に声をかけて室内へと迎え入れた。



「こ、これは……!」


「すごく綺麗……!」


 扉の向こうにあったのは、広大な宇宙空間が部屋中いっぱいに映し出された広い空間だった。


「なんということだ……まさか、レキトくん一人でこれを作ったのかね!?」


「ちょっと宇宙行く用事があったからな。その時に錬金術を駆使して作ったんだ」


「錬金術……!?」


 マジ博士はレキトの技術力に驚きを隠せない様子。


「すごーい!夜空より輝いて見える!綺麗!」


 一方ミルは大喜びで室内を歩き回り、部屋中に映し出されている宇宙空間を目を輝かせながら眺めていた。


「凄いだろ!たまに此処に来ては宇宙の景色を見て楽しむんだよ」


「この世界にこんな物があったんですね……!この景色見れるだけでも最高です!レキトさん凄いですよ!」


「だろ〜?」


 ミルは素直にレキトを褒め称え、褒められたレキトは得意げになって両手を後ろに組む。


「中央にあるこの球体の装置を操作すれば、宇宙を自由に旅できるんだ」


「凄い装置じゃないですか!?じゃあそれ使えば地球へも簡単に行けるんですね!」


「そうだ。だけど、移動する前にまずは地球の位置が分からないとな。マジ博士、何となくでいいから地球の位置を教えてくれないか?」


「あ、ああ……えっと……」


 マジ博士はスマホを操作しながらレキトに大まかな情報を伝え、レキトは謎の装置を慣れた手つきで操作する。


「えーっと……おっ!ここか?」


 レキトが装置を軽くタップすると、室内に映し出されている星々が一瞬だけぐっと圧縮したような感覚になり、すぐさま元に戻る。


「なんか……神の視点ってこんな感じなのかな……」


「神だったら宇宙もひとっ飛びだろうしなぁ……それよりほら、目の前見てみろ」


「あっ!」


 元に戻った景色は、先程まで映っていた景色と変わっており、三人の目の前には巨大な青い星が浮かんでいた。


「青くて綺麗な星……!」


「これだ!これが私の生まれ育った星「地球」だよ!」


「俺が長年探し求めていた星はここにあったのか……よし、これでいつでも地球に行けるようになったぞ。門を開けば、地球周辺に自由に飛べるからな」


「あ、ありがとうレキトくん……!まさか君もここまで天才だったとは……!お陰でピンキくんをすぐに助け出せそうだよ!」


「良かったな!じゃあ次は、ピンキが何処にいるか確認しないとな……マジ博士、何かやりたいことはあるか?」


「じゃあレキトくん、早速あの地球に移動できるかな?もし地球周辺にピンキくんがいるなら、このスマホで探し出せるはずだよ」


「分かった!」


 レキトが装置を操作すると、レキトの前に円状のゲートが開いた。

 ゲートの先は真夜中なのか真っ暗だが、人工的な灯りも幾つか見えた。


「よし、開いたぞ。ここから自由に出入りできるからな」


「ありがとう!では早速……」


 マジ博士はゲートを通り抜ける。レキトとミルもゲートを通って向こう側の世界に出た。



「ここが地球……すごい……!」


「空気からして完全に違うな……」


 真夜中の地球。目の前には長方形の建物が幾つも並んでおり、ガラス張りの窓から四角い光を複数放っている。


「あんな高い建物が幾つも……!所々光っていて綺麗ですよ!」


「此処は魔力もマナも存在しないみたいだな。マナがなければ魔物も存在できない、恐らく地球にはビルを破壊できるほどの大きな生物もいない、だからこんな目立つ建物を建てられるんだろうな」


「確かに……こんなピカピカした建物、空飛ぶ魔物に見つかったら一瞬ですよ」


「異世界の人は着眼点が違っていいね。どうやら我々は、大都会のビルの上に出てきたようだ。少し妙な気がするが……」


「妙な気?」


「いや、今はピンキくんが最優先だ」


 マジ博士はそう言ってスイスイとスマホを操作する。


「…………あっ!いた!」


「マジ博士、ピンキの居場所は分かったか?」


「ああ、無事に発見できたよ……やはりピンキくんは地球にいたようだね。しかも近くにいるようだ」


「なら、早速迎えに行きましょうよ。私達なら魔法ですぐ目的地に飛べますよ」


「魔法!君達は魔法使いだったのだね!ではお言葉に甘えて……ん?」


 ここまで言ったところで、マジ博士がその場で立ち止まった。


「あれ?マジ博士どうしました?」


「いや、ビルの間から何か見えたような……ほら、あれ……」


「えっ?」


 マジ博士が指で指し示そうとしたその瞬間、ビルの間から虹色に輝く巨大な何かが飛び出したかと思うと、マジ博士達のいるビルの目の前をものすごい速さで通り抜けていった。


「…………今の何です?」


「なんかイカっぽかったな」


「いやいや……レキトさん、あんな巨大なイカがいたら今頃ビルなんて木っ端微塵……えっ?イカ?」


「あれは……巨大ロボットだねぇ……」


「巨大……ロボット?」


 マジ博士の呟きにミルがなんとも言えない反応をする。


「つまりイカの形をした金属製のゴーレムってことだ。マジ博士、あれ何なんだ?」


「……あれは、この星に巣食う悪の組織が所有する巨大ロボットだね」


「悪の組織……!世界征服を企んだり、人をさらって魔改造したりするあの!?」


「レキトさん知ってるんですか!?」


「レキトくん、異世界の人間にしては妙に詳しいねぇ……そうそう、この星には最近何故か、地球征服を目論む組織が幾つか存在しててね……」


「マジかよおい……!?悪の組織ってフィクションじゃなかったのかよ……!?」


「レキトさん、やけに詳しいですね……」


 マジ博士の説明に、レキトは何故か目を見開いて大真面目に聞き入っている。


「さっき我々が目撃したのは、「魔界軍」という組織の所有する『サイコクラーケン』だね」


「魔界軍……!」


「魔王軍……?この世界に魔王いるんですか?」


「いや、ただ悪の組織がそう名乗っているだけのようだね」


 そんなやり取りをしていると、マジ博士のスマホが小刻みに震え始めた。


「おっ!ピンキくんから電話だ!」


 マジ博士は急いでスマホを操作して電話に出た。スマホの向こう側から、マジ博士にとって聞き馴染みのある声が聞こえてきた。


『あっ!ようやく博士と繋がった!僕のこと助けに来てくれたんだね!』


「勿論だとも!それよりもピンキくん!この騒ぎは一体何なのか分かるかね!?」


『あっ、そうそう!大変だよ博士!僕らが宇宙を出た後、地球に潜伏していた悪の組織が大々的に動き出しちゃったんだよ!』


「我々が出ていってから……?」


『ほら、僕らってどちらかというと地球守る側だったでしょ?時々、メタルメダルマンと共闘して悪の組織を壊滅させたりしたよね?でも僕らが出てったせいでそのパワーバランスが崩れたみたいで……』


「ま、まさか……地球を守る側が少なくなったから、これを機に悪の組織が暴れ出した……ということなのかね!?」

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