第三十話 一方その頃 1
「ほら、起きて皆、着いたよ。」
私、倉敷桜花は平坂くんと分かれて王都を出てから、商業都市エーリカッツォに向かっていた。
「ここがエーリカッツォ?賑やかね。」
王都とはまた違った活気の良さがある。とても賑やかだし、屋台が出ているのか良い匂いがどこからともなく漂ってくる。
「エーリカッツォはレヴィオル皇国における商業の要地ですから。」
王都から着いてきてくれている女性騎士エンリナが説明してくれる。
「これからあたし達はどうすれば良いの?」
心音ちゃんがエンリナさんに聞く。心音ちゃんは見るからに元気っ子って感じの子だ。エンリナさんともすぐに仲良くなった。
「今から領主の屋敷に向かいます。エーリカッツォに居る間はそこに滞在する予定ですね。まぁ、まずは挨拶ですが。」
「挨拶言うたって、ウチら作法とか一切知らへんで?」
綾香ちゃんの言うとおり、私たちは宮廷作法とかそういうのは習っていない。
「勇者様は爵位で言うところの大公と同じだけの地位に居ますから。そこまで気にしなくても構いませんよ。」
気にしなくて良いって言っても、多少は覚えといた方がいい気もするけど。良いのかな?今度誰かに聞いてみようかな。
領主様との挨拶が終わった後、私たちは二人一部屋で部屋をあてがわれた。今は花音ちゃんと一緒に居る。
「花音ちゃん。どうかした?さっきからずっと何か考えてるみたいだけど。」
私が聞くと、花音ちゃんは爆弾を落とす。
「いやね?私ってさ、庵のこと好きじゃんか。」
「え!?そうなの!?初めて聞いたよ!!」
よく話してるし訓練を一緒にしてたから仲は良いんだろうなぁとは思ってたけど。
「え?知らなかったの?ばれてると思ってた。まぁ、いいや、それでさ。庵ってモテるんだよね。告白こそされてないけど。庵のこと好きって言う子は案外多かったんだよね。」
確かに、顔も良いし、物腰穏やかで頭も良い。モテる要素はそろってる。
「で、異世界でも絶対女の子惚れさせる訳じゃん。」
「それで?」
私は思わず苦笑してしまう。だって思いっきり言い切るんだもん。
「庵のこと振り向かせるためにはどうしたら良いかなぁって考えてた。離れてる間に女を磨く?って伸しときたいなって。」
「花音ちゃんそのままでも充分可愛いよ?」
「今のままで落とせてるならとっくに付き合ってるよぉ。庵の好きな物とか知らない?」
平坂くんの好きな物かぁ。そう言われてもあんまり平坂くんの事すら知らないし。
「むしろ私の方が聞きたいなぁ。平坂くんってどんな人なの?なんか不思議というか。良くわかんないんだよね。」
「あー、そっか。確かに。あんまり関わりないとそう思われるのも仕方ないよね。」
ちょっと考えてから花音ちゃんは言う。
「一言で言うなら、超ハイスペックな化け物?」
化け物って、流石に言い過ぎじゃない?
「化け物って、確かに平坂くんは強いけど、そこまで?」
「逆に聞くけど、強くて頭も良い。料理とか裁縫とかも出来る上に性格も良い。そんな人みたことある?」
確かに、そんな人居たら完璧超人って言われそう。
「それが、平坂くんって事?」
「そ。アレをおんなじ人と思ったらダメだよ。どうしたら異世界来て三ヶ月で新しい魔法生み出せるのやら。」
結局よく分からないけど、凄い人って事で良いのかな。
「で?花音ちゃんはそんな人の何処を好きになったの?」
その夜は遅くまで照明が消えなかった。
と、言うわけで、勇者Sideで、しばらくやらせていただきます~