05話:黄色い主人公
D-1104とにとりは暗い森の中を走っていた。木々の隙間をほぼ真横から通る太陽の光は燃えるように赤く、一日の終わりを告げていた。その太陽の光はほんのわずかしか届かないほど森の木はうっそうと茂っていたが、周りに生えている大小のキノコに強い光を発するものがあったので、足元を踏み外すようなことはなかった。
にとり「ルーミアよ! 後ろから追ってきてるわ」
にとりは俺の前を走りながら後ろを確認して言った。
D-1104「危ない! 前! 前!」
彼は後ろを見て走るにとりを注意したが、それも空しく彼女は木の根に足を引っ掛けて転び、D-1104も巻き添えになって転んだ。ルーミアは日が傾くにつれ自分を闇で覆う必要がなくなり、力を増すとともに本体の姿が露わになっていった。同時に速度も上がり、二人は体制を立て直して逃げるのでは間に合わない近さまで接近されていた。
にとり「仕方ない! プランBだ。盟友、掴まって!」
D-1104はプランBについて何も聞かされていないので一瞬困惑したが、にとりの言葉を信じて彼女のリュックにしがみついた。にとりはどこからか自分の身体ほどの大きさがあるバネを取り出し、ルーミアと向き合うような体制になった。
そして少しかがみ、バネの力を解放した。にとりとD-1104は後方に大きく吹き飛び、ルーミアとの距離を引き延ばす。にとりは空中で前に振り向いた。
にとりは進行方向に木を見つけ、このまま飛び続けると激突することを察した。彼女は腰に巻いていたベルトからアームを出し、斜め前にある別の木を狙って伸ばす。木を掴んだ瞬間にアームを縮め、飛翔のベクトルをずらすことで木との衝突を回避した。
そして前方に大量のミサイルを撒き、進行方向を焼き払って着地場所を確保した後、エアバッグを作動させて比較的安全に着地した。
D-1104「少し荒っぽいが、ナイスフライトだ。お嬢ちゃん」
D-1104は目を回しながら言った
にとり「へへ、どんなもんよ。河童の科学は世界一ィィィィーーーー! ってね」
にとりも目を回しながら言った
◆◇◆◇
日は完全に沈み、辺りを照らすのはわずかな月明かりとキノコから出る光だけになった。にとりのバネによる跳躍でルーミアから大きく距離を離したように思えたが、彼女も同様に加速しているらしく、俺たちが目を回している間にかなり近くにまで迫ってきていた。
D-1104「どうする!? 今から走っても追いつかれるぞ!」
俺は焦りながらそう言った。半面、にとりは落ち着いていた。
にとり「いや、もう私たちの勝ちだ。ここまで来れば安全だよ」
彼女は少し先にある森が開けている場所を指さした。そこには小さな家があり、月明かりがそれを照らしていた。俺はあの家に逃げ込もうと提案したが、にとりはその必要すらないと得意げに言った。
黒い服を着た怪物がすぐ側まで近寄り、俺を捕食せんと飛び上がる。その瞬間頭上を強い光が走り、彼女の身体を貫いた。光が出た方向に振り向くと、同じく黒い服を着た少女が立っていた。
???「なんだ、にとりお前妖怪なのに妖怪に襲われてるのか?」
にとり「私じゃないわよ! こっちよこっち」
にとりは俺をその少女の前に突き出した。
???「珍しい服着てるな! 私は霧雨魔理沙だ。よろしくな!」
霧雨魔理沙という名の少女はこう言いながら手を差し出してきたので、俺も手を差し出して彼女と握手をした。まっすぐな声をした彼女はとても頼もしく見えた。
後ろからうなり声が聞こえたと同時に、ダウンしていたルーミアが飛び上がった。先に魔理沙を倒した方が早いと判断したのか、彼女に向かって弾を放つ。魔理沙はニヤリと笑い、手に持っていた八角形の物体を両手で構えた。
その八角形の物体から先ほどとは比べ物にならない太さの光が放出され、弾をかき消しつつルーミアにその光を直撃させた。彼女は無数の赤と青の物体をバラまきながら彼方まで吹き飛んでいった。日が沈み、パワーも上がっているはずのルーミアを魔理沙は一撃で倒した。恐るべき力だ。
魔理沙「弾幕は火力だぜ!」
彼女は気分がよさそうにこう言った。
前話に載せておいた方が分かりやすかったかもしれませんが、幻想郷の地図はこちらのものを参照させていただいております
https://seiga.nicovideo.jp/seiga/im1446078