02話:Dクラスなおてんば恋娘
俺は少女の甲高い声で目が覚めた。
???「起きろ~!人間~!!」
恐らく彼女が叩いているのだろうか、頬がヒリヒリする。俺は目を開けた
D-1104「なんだよまったく…急にどうしたんだ?お嬢ちゃん」
こう言葉を発してから、はっとして口をつぐんだ。ここはどこだ? 確か、俺は謎の空間に落ちていたはずだ。
自分を起こしてくれたこの子は自分をチルノと名乗った。この湖一帯を取り仕切る最強の妖精らしい。そしてここは幻想郷という場所のようだ。幻想郷がどういった場所なのかは彼女もよく理解していないようだが、ここでは外の世界と違って妖怪や妖精、神様までもがこの地で自由に暮らしていることが分かった。倒木に2人で座って話しているうちにすっかりと打ち解けた雰囲気になった。
チルノ「でさー、その諏訪子って神様が怖いんだよね~。あたいがカエルを凍らせてるとすーぐ後ろから殴ってくるんだ。」
D-1104「スワコ様か、おっかない神様だな」
そうなんだよ、と軽く笑ってから、チルノは唐突に何かを思い出したかのように聞いてきた。
チルノ「そういえば、おまえの名前はなんていうんだ?」
確かに自分の名前はまだ名乗っていなかった。これは失礼、と笑いながら自分の名前を答えようとした。しかし、誰からも忘れられてしまった名前を名乗りたくない。俺はもう██ ██ではないのだ。しかしどうしたことだろう、どうやって名乗ろうか。
D-1104「そうだな……実は名前を忘れてしまったんだ。仕事柄でな」
こう言うしかあるまい。こんな言い訳が受け入れられるか不安であったが、チルノはあっさりと受け入れてくれた。
チルノ「ふ~ん、そうなのか。ならあたいが名付けてやるよ!!」
名前を付けてくれるらしい。これは期待できる……と思ったのもつかの間、何も思いつかないまま5分ぐらいが経過した。
チルノ「なんも思いつかない! なんかヒントちょーだい!」
問題ではないから正解も存在しないので困った。俺は職業の影響で名前を失ったと改めて伝えた。そこで職業、という言葉で思いついたらしい。チルノはD-1104のオレンジのつなぎをじろじろと眺めだした。
D-1104「急にどうしたんだ? お嬢ちゃん」
チルノ「おまえの着ているそれって、いわゆる『せーふく』ってやつだろ? そこに名前みたいなやつがあるんじゃないのか?」
彼女のカンは当たっていた。つなぎは毎日取り換えるものなので刺繍などはなかったが、腕元に識別タグがあり、「D-1104」という文字が書かれていた。それが文字であることには気づいたが、彼女は英語が分からないのかそこに書いてある文字を読むことはできなかった。D-1104は軽く笑いながら読み方を教えてやった。
チルノ「でぃー……1104? 変な名前だな……」
彼女は妖精の中では頭がいい方ではあったが、人間と比べるとバカであった。
◆◇◆◇
D-1104を名前だと思って復唱しているチルノを見て、面白くて俺は笑ってしまった。同時に、放送室に閉じ込められていたお嬢ちゃんのことを思い出した。助けた時の少女とチルノの見た目の年齢が近いこともあり、つい彼女が元気であるかどうかを気にせずにはいられなかった。
彼女を助けた後、彼女は財団に入り俺に会いに来てくれた。彼女は元気にしているだろうか?
そんなことを思っていると、隣に座っていたチルノは何かを思いついたかのようにこちらを向いてきた。
チルノ「『1104』からもじって『いちまる』なんて名前はどうだ!?」
どうやら彼女は俺の名前を考えてくれていたらしい。D-1104と毎回呼ばれるのもいい気分ではないし、呼ぶ方も面倒だろう。
俺はその時から自分を「いちまる」と名乗ることにした。
D-1104は「いちまる」と呼ばれるようになりました
チ「そうだ! カエル凍らせるところ見せてやるよ!!」
い「やめてあげようぜ…カエルがかわいそうだ」
チ「こう見えてカエルを殺さないように凍らせるの、結構難しいんだぞ~」
ド オ ン !?
洩矢…諏訪子?
どうして今ここに…