表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Dクラスな幻想郷  作者: ぐんそー
幻想郷を旅しよう
16/18

15話:怪訝な顔

 


 ――深い深い縦穴を通って行く――



 パルシィがいる橋を過ぎれば、いよいよ旧地獄である。


霊 夢(お燐曰く、旧都に今まで見たことのない人間がいるという話だった。そしてパルシィの話を聞くには、少なくとも私を除いた「人間」の往来はなかったそうだ。この二点を考えるとまず人間の里の人間ではないし、外の世界から旧地獄に人が迷い込んだという例も聞いたことがないため紫が幻想郷に人を呼び寄せるときの「出口」が旧地獄にズレたという可能性が高い)

 

 霊夢はそう考えているうちに、旧都に到着した。


 とりあえず町の中をうろついて様子を伺った。やはりここは何度見ても人間の里より栄えており、温泉街に近づくにつれて人通りが多くなっていた。人といっても、ほとんどが鬼や妖怪であるが。



 ふいに、後ろから霊夢を呼ぶ声が聞こえた。 


???「よう、探し物でもしてるのかい?」


霊 夢「あら勇儀じゃない。話が早いわね、何か話でも聞いてたの?」


 その声の主は勇儀であった。ああ、と返してから彼女は続ける。


勇 儀「何を探してるのかは知らないが、目線のやり方がまさに何かを探してるようだった。それで、何を探してるんだい?」


 霊夢は、温泉街のことなら温泉街の元締めに聴くのが一番早いと判断したが、紫が人間を呼び寄せたという情報は伏せて答えた。


霊 夢「実は、旧地獄の方に人間が迷い込んだそうなのよ。しかもパルシィに知られないように」


 なるほど、と勇儀は返し、腕を組んで考える動作を取った。そして間もなくして返答が来た。


勇 儀「あー、あいつかもしれない。思い当たりがあるぞ」


 想像していたよりかなり早く事が済むことがわかり、霊夢は心底安心した。


霊 夢「本当!? 是非場所を教えてくれるかしら」


 しかし、()()()()()()()を躍起になって探している霊夢の一連の言動は、勇儀に違和感を与えることとなった。彼女は怪訝な顔をして尋ねた。


勇 儀「ああ、それはいいが。なんでそんなに一生懸命になって探してるんだ?」


 この質問は、霊夢に対して致命的だった。今回の方針として、なるべく部外者への情報の流出はしないようにする必要があったが、目の前にいるのは鬼だ。嘘をつくわけにはいかないのである。

 

 少し迷ったが、霊夢は今の考えを正直に答えることにした。


 鬼と目を合わせて、はっきりと彼女は述べた。


霊 夢「ごめん、機密事項だから話すわけにはいかないわ」


 勇儀は少し顔をしかめた。D-1104が紫に声を張り上げた時と同様、こちら側の筋は通っていないため当然のことである。さらに、これは鬼に隠し事をしているとわざわざ述べているようなものであり、それほどに霊夢の発言はリスクがあるものだった。


 しかし、そのリスクに対して勇儀は笑顔で応えた。


勇 儀「わかった、嘘をつかれるよりはずっといいよ。それが正直な対応であるのなら、あんたの考えを悪くは言わないさ」


霊 夢「……ありがとう」


勇 儀「それに、隠し事に関して言うなら私も謝らなきゃいけない。実はそいつは、すでに死んでるんだ。もっとも、隠してたわけではないが」



◆◇◆◇



 道に迷ってしまった。


 霊夢に地図を渡され、お燐と別れてからしばらく歩き回っているが今は自分がどこにいるのかさえもわかっていない。というのも、地図を渡されたはいいが読み方が分からないのである。地図によると長屋はおおよそ北東にあるそうだが、なにより自分向いている方角が分からずにいた。今の時刻と太陽の位置から方角を割り出そうとしたがやはり時計の時間がずれているようで、平安京のような格子型の道と時計からわかる方位が一致することはなかった。

 こればかりはどうしようもないが、夕方になれば日が暮れて西の方角が分かるだろう。それまでこの辺りをうろついて過ごすことにした。


 ぼんやりと通りを眺めながら歩いていると、左の方に楊枝屋を見つけた。そういえば江戸時代は色々な職人がいて、それぞれがそれぞれの品を売っていたというのを小学か中学の教科書で見た気がする。右を見てみると桶屋があった。風が吹けば儲かるのだろうか。


 そんなことを考えながら歩いていたが完全に意識がそちらに向いていたようで、前から来る人に気づかず肩をぶつけてしまった。自分は幻想郷縁起を地面に落としてしまい、相手からは何冊もの本が崩れ落ちる音が聞こえる。


D-1104「やべっ、ごめんなさい。俺も拾います」


???「ごめんなさいこちらこそ、助かるわ」


 拾った本は幻想郷縁起のような昔っぽい作りの本やこの街に合わないようなオカルト本など様々であった。相手のオレンジ色の髪の少女は、俺が落とした幻想郷縁起を拾い上げた。


???「あら、幻想郷縁起じゃない。これ、どこで手に入れたんですか?」


 彼女は少し怪訝な顔でこちらを見てきた。何かを疑われているのかもしれないと慌てて答える。


D-1104「あ、ああ。さっき阿求っていう奴に貰ったんだ」


 きょとんとした表情で阿求の名前を反復し、直後何かに気づいた顔をした。


???「ああ、あなたが霊夢さんの言ってた『外から来た人』ね! 私は小鈴よ、よろしくね」


 そういえば、阿求の他に小鈴という奴が里で人を探しているという話を聞いていたような気がする。


D-1104「よろしくな。ところで、その幻想郷縁起についてなんか知ってるのか?」


小 鈴「知ってるも何も、それは私のところで製本してる本ですよ」


 もしや、俺は泥棒として疑われていたのではないか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ