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Dクラスな幻想郷  作者: ぐんそー
幻想郷を旅しよう
14/18

13話:集める者

 始めは行方不明者を探すためだった議論が、いつの間にか外来者の遺体を探すための議論になっていた。


阿 求「幻想郷全体で情報を共有すればすぐに見つかるでしょうけど、あまり事を大きくしたくないんだったわよね。あなたは神霊に聞いてみたかしら?」


霊 夢「聞いてみたけど、外来人の遺体が思ったより多く見つかってて……今は一体一体見て回ってるところよ。地霊殿にも何度か行ってみてるけど、タイミングが悪いらしくてお燐には会えていないわ」


 二人はうなだれて、大きくため息をついた。この広い幻想郷から、生きてるかどうかすら分からない人間を探すのは大変なことだ。この状況で、幻想郷の土地を知らない俺にできることなどあるのだろうか?

 阿求は俺に視線を向けて、軽く咳払いをして尋ねた。


阿 求「ところで本題に入るけど、貴方は『人間の里が安全な理由』について説明できるかしら」


 幻想郷に来たばかりなのにそんなことを知るわけがないだろう。俺は全く分からないと答えた。


阿 求「そう、貴方は幻想郷の仕組みについてまだ知らないわ。だから、今から私が説明するわ、幻想郷のルールを」


D-1104「幻想郷のルール?」


 阿求は軽く頷き声を発した。


阿 求「幻想郷は、平たく言えば妖怪のために創られた土地なのよ」


 幻想郷が妖怪のために創られた土地? いきなり突拍子もなく結論を告げられて、全く理解が追い付かない。俺がフリーズしているところに阿求は続けた。


阿 求「まずは、幻想郷と外の世界が隔離されるまでの話をしましょうか」


 こうして、阿求の解説が始まった。今まで聞いた言葉による解説の中で、一番わかりやすいものだと感じた。つまるところ、幻想郷の妖怪たちはこれ以上人間が減ると困るため人間を取って食うようなことはしないそうだ。


D-1104「そうだとすると、俺がルーミアに襲われたのはなんでなんだ?」


阿 求「それはあなたが外来人だからね。外来人は『幻想郷』の人間としてカウントされてないから襲っても問題ないのよ」


 これは困った話だ。これでは迂闊に外を出歩けないじゃないか。


阿 求「そうね、貴方はその服を着替える必要があると思うわ。少しお金を出してあげるから里の着物屋に行くといいわ。それに、何日も洗ってないでしょう? その服」


 オレンジのつなぎを見るとあちこち泥で汚れているし、ちょっと臭っていた。いやはや、恥ずかしい。


阿 求「霊夢、D-1104の引率をお願いしていいかしら?」


霊夢はあからさまに面倒そうな顔をした


霊 夢「ええ~?」


阿 求「お釣りは貴方にあげるから」


霊 夢「任せてちょうだい」


 自分に利益があると分かった瞬間に霊夢の顔色が変わった。驚くべき反応速度である。阿求は自分の横に置いていた本を見て、俺に話しかけた。


阿 求「あ、そうだ。貴方にはこれをあげましょう」


 阿求は一冊の本を手渡した。表紙には幻想郷縁起と書いてあった。


阿 求「私が幻想郷について、九代に渡って書き記した本よ。貴方は、幻想郷についてよく知る必要があるわ」


 幻想郷の成り立ち、妖怪の対処法、幻想郷の地名などについて解説してある本であるそうだ。阿求が千年以上前から自分の目で幻想郷を見て書き続けた本である。


D-1104「ありがとう、読ませてもらうよ」



◆◇◆◇



霊 夢「これでもう、どこからどう見ても幻想郷の人間ね」


 俺は薄い黄土色の着物に身を包んでいた。刈安というススキみたいな植物を染料にしたらしく、なんとなくオレンジ色に近いの着物を着たい俺も、着物代を安く済ませたい霊夢も満足する買い物となった。


霊 夢「いや~儲かったわね! 今日はツイてるわ」


 着物を着るのが初めてであるため、なんとなく不思議な感じがする。というか、脚がスースーする。少し歩き方がぎこちなくなって、何もないところでコケそうになったりした。


 周りを見てみると朝と変わらず人間の里はにぎやかな雰囲気であった。太陽が真南に見えたので、俺たちは二人で昼食をとることにした。霊夢はお金が貰えて機嫌が良いらしく、好きなものを奢ってくれるそうだ。というか、俺は幻想郷のお金を持っていないのでお金の払いようがない。周囲を見ると、蕎麦屋や茶屋、それと大衆食堂のようなものも見えた。俺はここの人間が普段どんな食事をしているのかを知りたかったので(少し遠慮しているのもあるが)、ここで食事をしようと指を指した。


 この瞬間、俺は大衆食堂の看板しか見えておらず、目の前を手押し車が通っていることに気が付かなかった。俺は頭から手押し車に突っ込んだ。


霊 夢「ちょっと! あんた大丈夫!?」


D-1104「だ……ダイジョウブ」


 手押し車は中身が空で底も深かったため、上半身がまるまる手押し車に入っている状態のようだ。足も浮いている状態のため踏ん張りが効かず、身をよじらせてるところを霊夢と、おそらく車の持ち主であろうもう一人の手に引っ張り上げてもらった。持ち主の笑い声が聞こえる。


持ち主「あっはっは! まったく気を付けてくれよ~」


D-1104「いや、すまない。よそ見してたよ」


霊 夢「ごめんなさいね~、私も見てなかったわ……って、あっ」


 霊夢は何かに気が付いたように口を開いた。車の持ち主は赤い髪に、ゴスロリ風の服を着ていた。霊夢はその赤髪の車の持ち主と肩を組んで、こちらに背を向けた。

 

 おそらく二人で会話しているのだろうかしばらくそのまま動かなかったが、間もなくすると霊夢は持ち主と肩を組むのをやめ、真剣な顔で言った。


霊 夢「その話、詳しく聞かせてもらえるかしら?」


持ち主「いいよ。飯おごってくれたらな」


 流石に三人分の外食費は懐に痛いらしく、霊夢は頭を抱えた。

幻想郷縁起の内容については、東方求聞史紀を読むといいでしょう。

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