11話:人探し
目が覚めると、見知らぬ天井が広がっていた。俺は辺りを見回すと、間もなくそこが博麗神社の縁側であることを理解した。恐らく宴会の途中で寝てしまったのだろう、二日酔いで頭が痛い。太陽が傾いて赤い光を伸ばしていたがどちらが西か東かが分からなかったため、これが日の出なのか日の入りなのかは分からなかった。
霊 夢「あら、起きたのね」
宴会の片づけをしていた霊夢が話しかけてきた。
D-1104「おはよう、今何時だ?」
霊 夢「六ツ半ぐらいかしら?」
D-1104「六ツ半?」
霊 夢「ああ……外の世界とここの世界じゃ時間の数え方が違ったんだっけ。あんたにこれをあげなきゃね」
霊夢はひょいと縁側を登り、ふすまを開けて何かを探した。そしてその何かを取り出すと、それを俺の目の前にぶら下げた。それは金色の懐中時計だった。
霊 夢「私達にはあんまり必要ないものだからね、懐中時計。でも貴重品だから大事に扱ってね」
六ツ半というのは多分昔の時間の数え方だろう。霊夢に礼を言って、時計を6時半に合わせた。多分、というかどう考えても正確な時間になるワケがないが、現代人は手元に時計がないと不安になるものだ。懐中時計の裏を見ると、そこには『博麗神社』と書かれたお札のようなものが貼ってあった。
D-1104「これは?」
霊 夢「あー、私の神社のお札よ。妖怪みたいな危険な存在からあんたを守ってくれるわ」
D-1104「なるほどな。ありがとう」
このとき少し彼女の声がぎこちないように感じたが、彼女の善意をありがたく受け取ることにした。宴会の片づけを手伝おうと立ち上がったところで、後ろから声をかけられた。例のごとく、そこには穴から上半身だけを出した紫がいた。
紫 「起きたばかりのところで悪いけど、今後の話をしましょうか」
◆◇◆◇
霊 夢「まあ、D-1104は仕方ないとして……なんであんたの分の朝食まで作らなきゃいけないのよ」
紫 「まあまあ、たまにはいいじゃない」
朝食はご飯としじみの味噌汁だった。二日酔いに染みる、質素だが美味しい朝食である。さて、と紫が切り出した。
紫 「まずはレミリア・スカーレットについてね」
昨日は宴会があったのでこの「レミリア問題」とやらを知ることができなかった。紫が現在起こっている現象について説明した。
レミリア・スカーレットは俺が幻想郷にたどり着いてチルノに起こされた場所、霧の湖の近くに建っている紅魔館という建物に住んでいたのだが、ある日魔法のようなものでに連れ去られてしまったそうだ。そして彼女の行方を計算した結果"外の世界"に行きついたのが分かったそうだ。
D-1104「それじゃあ、俺をこっちの世界に連れ込んだのは何が目的なんだ?」
紫 「まず、あちらの世界の人間をこちらに引き込んでも影響がないかを確認するための実験、そしてあちらの世界にいても影響を受けない人材の確保、といったところかしら」
D-1104「人材の確保、というと俺以外にも俺たちがいた世界から連れてきた奴がいるってことか?」
紫 「そうなのだけど……私が接触を図る前にその全員の行方が分からなくなってしまったわ。今は生きているかどうかすら分からない」
D-1104「確か俺の時は式神に後を追わせていたよな?」
紫 「ええ、貴方の時はあちらの世界の人を攫う手順に慣れてきた状態だったから、肉体の出現位置を割り出して式神に指示を出すところまではできたの。それ以前は呼び寄せた時点で気を失ってしまって」
俺たちの世界からこちらの世界に人を引き込むには莫大なエネルギーを必要とするそうだ。紫は続けた。
紫 「というわけで、これからまず一つ、貴方にお願いするわ。その行方が分からない外の世界の人間を探し出して欲しいの」
自分一人でやるには無理な仕事ではないかと思ったが、他にも協力者が何人かいるとの事だった。今その願いを断っても他にやることがあるわけでもないので、俺はそれを引き受けることにした。現状は、ある程度狭いメンバーで情報を共有して、なるべく波を立てずに事を進めているそうだ。
捜索する人間は、俺と同じDクラス職員が一人、そして酩酊街の人間が一人である。
ここまで会話をしてあることに気が付いた。
D-1104「そういえば、ブライト博士はどこにいるんだ?」
紫 「彼はとりあえず霖之助の家に泊めてもらってるわ」
酩酊街について
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/43958.html
忘れられたものが行きつく場所、財団の要注意団体です
幻想郷みたいですね