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エロフに転生したので異世界を旅するVTuberとして天下を目指します  作者: 一色孝太郎


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第81話 綱紀粛正

「これは……」

「火の手はありませんね」


 自動撮影されていた映像を見た司祭さんたちは兵士たちに疑いの目を向ける。


「う、うるせぇ! こいつは放火の犯人だ!」

「貴殿は現行犯、と仰っていますが、どう見ても現行犯ではありませんね」


 司祭さんに冷静に指摘され、リーダー格らしい兵士は顔を紅潮させる。だが反論が思いつかないのか、わなわなと震えている。


「そもそも、女性をこんな風にイヤらしい目で見ながら取り囲むなど許されることではありませんわ。リリス、ここで動画を止めてくださる?」

「え? うん」


 レティシアに言われ、ニヤついた兵士たちに取り囲まれているシーンで一時停止する。


「御覧なさい。これが犯罪者を捕らえようとする兵士の姿ですか?」

「……これは」

「男たちが集団で女性を誘拐しようと取り囲んでいるように見えますな」


 それもそのはずで、映像には胸をニヤつきながらもジロジロと見ている様子だけでなく、もっこりしている股間までばっちり映っているのだ。


「こ、こんなものは捏造だ! 俺らは森を燃やしたのをたしかに見たんだ! こいつはそれを俺らに見られたから逃げたんだ!」


 リーダー格らしい兵士がそう叫んだが、司祭さんは冷ややかな目でピシャリと宣告する。


「リリス・サキュア様の引き渡しには応じられません。イストール公国アスタルテ教会は記録の女神アルテナ様を認めております」

「んだと!? この女は神の使いなんかじゃねぇ! 悪魔の使いだ! 偽の動画とやらで俺たちをはめようとしてやがるんだからな!」


 そう怒鳴り声を上げた兵士を司祭さんはギロリと(にら)みつけた。


「あ? んだ? てめぇ!」

「……貴殿のその発言はアスタルテ教会に対する冒涜です。今すぐに撤回しなさい」

「ああん?」


 兵士も負けじと睨み返し、ピリピリとした空気が張り詰める。


 と、次の瞬間、大勢の人たちが中庭に飛び込んできた。その先頭にはルイ様の姿がある!


「ルイ様?」

「リリス嬢! 聖女レティシア様! 貴様ら! 一体何をしている!」


 ルイ様の周りは警備隊の兵士たちとは違う服装の兵士たちが固めており、さらにその後ろからは警備隊の兵士たちもぞろぞろと続いている。だがそれでも俺たちを囲んでいる兵士たちは槍の穂先を俺たちに向け続けている。


「おい! 早く包囲を解け! 命令だ!」


 ルイ様はそう命令するが、後ろからついて来ていた警備隊の一人がそれを止める。


「待て! そのまま逃がさないように警戒を続けろ!」

「おい! アンリ!」

「殿下、この者は放火の現行犯であるとの報告を私は受けており、現に警備隊の一部はすでに消火活動を行っています。放火は重罪であり、放火犯は捕らえねばなりません」

「なっ!?」


 どうやらあのアンリという男が警備隊側の責任者のようだ。


「あら、副長までいらしたのですね」

「聖女レティシア様、ご無沙汰しております」


 アンリはレティシアに対して一礼した。どうやら二人は知り合いのようだ。


「副長、あなたの受けた報告は間違っていますわ」

「どういうことですかな?」

「動画を見ていただければ分かりますわ。もっとこちらに来て下さる?」

「はい」

「リリス、もう一度最初から見せてくださる?」

「うん」


 俺は全員が見えるように画面を大きくし、動画を最初から流した。そして俺が空に逃げたところで動画を止めると、ルイ様がすぐさま俺たちに向かって頭を下げた。


「リリス嬢、申し訳ありませんでした」


 それからすぐに司祭さんにも向かって頭を下げる。


「聖女レティシア様、司祭殿! 神聖なる大聖堂でこのような事件を起こしたこと、イストール公に代わり謝罪いたします」

「ええ」

「ルイ殿下、その謝罪は受けとりましょう。ですが、この者たちはアスタルテ教会の認めた記録の女神アルテナ様を悪魔呼ばわりいたしました。これはアスタルテ教会に対する冒涜です」

「なっ!? おい! このならず者どもを拘束しろ!」

「「「はっ!」」」

「なっ!?」

「お待ちください!」


 ルイ様の命令で警備隊ではないほうの兵士たちが動き出し、俺たちを取り囲んでいた兵士たちもさすがに焦った様子になったが、アンリが横からそれを止めてきた。


「なぜ止める!」

「ルイ様、この者たちは警備隊の者です。この者たちは規則に基づき、警備隊が責任を持って処分いたします」


 それを聞いた兵士はあからさまにほっとした表情を浮かべたが、ルイ様は怒りを隠しきれない様子でアンリに抗議する。


「な!? こんな状況でまで部下をかばうのか? アンリ、貴様――」


 だがアンリと彼が連れてきた警備隊の兵士たちはそれを最後まで聞かず、俺たちを取り囲んでいる兵士たちの(もと)へと歩み寄った。


「副ちょ――」


 次の瞬間、俺たちを取り囲んでいた兵士たちの首が一斉に飛んだ。


「え?」


 あまりの事態に呆然としていると、アンリたちは残る兵士たち全員の首をあっという間に()ねてしまった。


「規則に則り、処分いたしました。中庭を血で汚してしまったことを謝罪いたします。追って清掃員を派遣いたしますので、何卒ご容赦ください」


 アンリは平然とそう言ってのけた。それに対してレティシアは不快感を隠そうとせずに抗議する。


「どうしてこのようなことを? これでは話を聞けないのではありませんか?」

「聖女レティシア様、この者たちの規則違反はアスタルテ教会への冒涜、上官に対する虚偽報告、罪を捏造して一般女性にその濡れ衣を着せる、イストレア大聖堂を許可なく捜索するという越権捜査、とこのように明確に分かっているだけでも四つございます。この時点でこの者たちには処刑以外の道は残されておりません。聖女様のお慈悲には感謝いたしますが、それでは警備隊の規律は緩んでいく一方です。綱紀粛正のためにも必要なことだったとご理解ください」


 表情一つ変えずにそう言ったアンリに俺は思わず絶句してしまう。


「神聖なる大聖堂を血で汚してしまったことにつきましては重ねて深くお詫び申し上げます。ですが、これで我々警備隊がこのようなならず者の集まりではないということもご理解いただけたかと存じます」


 アンリはそう言うと俺に向き直る。


「リリス・サキュア様、この度は部下が大変なご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした」


 そのままの表情で俺にも謝罪したアンリはすぐに警備隊の兵士たちを引き連れ、中庭から出ていった。その様子を俺は呆然と見送ったのだった。

補足ですが、撮影の制限は以下のとおりとなります。


・撮影はリリスが何かせずとも全て自動で行われる

・撮影は視点は二つ

 ・リリス視点(ビデオカメラを持っている視点)

 ・第三者視点でリリスが撮影されている(アングルは後から自由に変更可能)

・撮影された動画は容量制限を超えると古いものに上書き保存される(ドライブレコーダーのようなイメージ)


本編内での描写が不十分だったようで申し訳ございません。

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