表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エロフに転生したので異世界を旅するVTuberとして天下を目指します  作者: 一色孝太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/122

第70話 夕日の絶景スポットに行ってみた

「異世界からこんにちは。リリス・サキュアです♪」


 画面の中のリリスはいつもの白いワンピースを着ており、石造りの町並みの中を歩いている。


「今日はですね。なんと、ここイストレアに素晴らしい夕日が見られる絶景スポットがあるという情報をゲットしたので行ってみたいと思います」


 石畳の上をゆっくり歩いているものの、歩を進めるたびに彼女の大きな胸が揺れ、その存在感をこれでもかと主張している。


 そのせいだろうか? 彼女の姿を見た通行人の中には足を止め、彼女の姿を目で追う者も多くいる。


「この辺りに来るのは初めてなんですけど……本当にこの先にあるんでしょうか? ちょっと通行人の方に聞いてみたいと思います。あの、すみません」


 リリスは道を歩いている高齢の女性に声を掛けた。


「ん? なんだい?」

「物見の塔という場所をご存じですか?」

「物見の塔? ああ、知ってるよ。お嬢ちゃん、見に行くのかい?」

「はい。今日は一般人でも入れるって聞いたんですけど、物見の塔に行く道はこの道で合ってますか?」


 すると女性は驚いたような表情をする。


「いいや、違うね。こっちに行っても鍛冶屋とか工房があるだけだよ。いいかい? 来た道を戻って、馬車の通る大通りまできたら左に曲がるんだよ。そうしたら池のある丸い広場があるから、右に曲がるんだ。イストレア大聖堂とは反対の方向だね。そうしたらそのまま門まで歩きない。物見の塔に登りたいならそこから街壁に上がるんだよ。そうしたら、あとは見張りの兵士が案内してくれるよ」

「えっ? そうだったんですか!? ありがとうございます!」


 リリスは驚きながらも女性にお礼を言い、来た道を引き返し始めた。


「えへへ、ちょっと失敗しちゃいました。でも親切なおばあちゃんに会えたので良しとしておきましょう」


 リリスは恥ずかしそうに頬を染め、ぺろりと舌を出した。


 すると画面がフェードアウトし、再び画面が戻ってくると今度は石造りの壁と巨大な門が映し出されていた。


「おばあちゃんに言われた門に来ましたが、見てください。もうすでに行列ができています」


 リリスの実況に合わせて画面が少し右に移動し、画面から見切れていた行列が映し出される。


 行列の先頭は門の右側にある小さな扉の前から続いており、人数は二十人ほどだろうか?


 どうやら家族連れやカップルばかりのようで、リリスのように一人で並んでいる者はいない。


「それでは、私も早速並んでみようと思います」


 リリスが行列の最後尾に向かって歩いていくと画面はフェードアウトし、再び画面が戻ってくると今度は狭い石造りの急な螺旋階段をリリスが頬を上気させながらゆっくり登っている様子が映し出された。


「はぁはぁはぁ。これは、ちょっと……大変です」


 そう言うとリリスは壁に手をついて立ち止まった。


「この、はぁはぁ、階段ですけど、はぁはぁ、兵士の皆さんはですね」


 息も絶え絶えな様子のリリスだが、一生懸命に説明を続ける。


「いつもここを、昇り降りしている、そうです」


 ようやく息が整ってきたのか、リリスは大きく息を吐いた。


「一気にですね。駆け上がることも、あるそうですよ」


 そう言い終えると、リリスは階段の上をきっと見据える。


「それじゃあ、頑張って登ろうと思います」


 リリスが再び階段をゆっくりと登り始めると画面はフェードアウトし、次に画面が戻ってくると階段をよろよろと登ってくるリリスが上から映しだされた。


 無言のまま登ってくるリリスの荒い息遣いが響いている。


 やがてリリスは最後の一段をなんとか登り切ったものの、そのまま膝に手をついてがっくりとうなだれてしまった。


 だがすぐに顔を上げ、うっすらと汗が滲んだまま笑顔を向けてくる。


「はぁっ、はぁっ、はぁっ、登り切りましたよ。どうやらここが最上階みたいです。早速外に出てみましょう」


 リリスが歩きだすとカメラはリリスの後ろ姿を追いかける。そして小さな扉をくぐって外に出ると、目の前には雲一つない一面の青空が広がっていた。


「見てください。こんなに高いところまで登ってきていたんですね」


 するとカメラが動き、やや見下ろすようなアングルとなった。画面には森や畑とその合間を縫うように伸びる一筋の道が映し出される。


「今度は町のほうを見てみましょう」


 リリスは歩いて反対側へと向かった。


「見てください。イストレアの町が一望できますよ!」


 画面には赤い屋根の建物がひしめき合うイストレアの町が映し出されている。


「あ! あれがお城で、あれがイストレア大聖堂ですね」


 すると画面がズームされ、イストール公の城が映し出され、続いてイストレア大聖堂が映し出された。


「夕日まではまだ少し時間がありますので、ちょっと待ってみようと思います」


 それから画面がフェードアウトし、画面が戻ってくると夕暮れの時間となっていた。最初に登ったときよりもかなり混雑しているものの、リリスはかなり早い時間から来ていたこともあってか最前列を確保していた。


 混雑しているからだろうか?


 リリスは何もしゃべらず、ただじっと夕日を眺めている。


 カメラはそんな彼女のすぐ後ろへと移動した。リリスの髪と特徴的な長い耳が黒いシルエットとなり、その向こうには茜色に染まるイストレアの町並みが、さらにその先には地平線の彼方へと今まさに沈まんとする太陽が映し出されている。


 そのまま太陽はゆっくりと沈んでいき、やがて完全にその姿が見えなくなった。あたりは急速に暗くなっていき、それと合わせるように画面もフェードアウトする。


 次に画面が戻ってくると、今度は晩餐会の後に撮影したのと同じ室内が映し出された。しかしリリスの服装はドレスではなく普段のワンピースである。


「イストレアの夕日、いかがだったでしょうか? 登るのが大変だって聞いていたので早めに行きましたけど、大正解でしたね」


 リリスはふにゃりとした笑顔を見せる。


「良かったらコメント欄で感想とか、教えてもらえると嬉しいです」


 リリスはそう言って両手を胸の高さまで上げ、人差し指を下に向けて上下させる。


「あ! それとですね。今回は告知があります。実はですね。今度ライブをしてみることにしました。まだ使い方がよく分かっていないんですけど、もしライブ配信しているのを見かけたら遊びに来て下さいね」


 リリスは極上のスマイルを画面に向ける。


「あとあと、いいねボタン、チャンネル登録もよろしくお願いします。それじゃあ、また会いにきてくださいね。バイバーイ」


 リリスは笑顔で右手を振り、動画はそこで終了するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ