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エロフに転生したので異世界を旅するVTuberとして天下を目指します  作者: 一色孝太郎


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第43話 日本では……(10)

 リリスがラ・トリエールで働いた動画が公開された翌朝、ホームルーム前の教室でいつものように剛たちは動画の感想を語り合っていた。


「やっぱコスプレだよなぁ」

「わかる~」

「今度はメイド風だもんなぁ。おかえりなさいませご主人様って言われてみてぇ」


 周りの目も気にせずに西川がそんなことを(つぶや)くと周囲の女生徒たちがピクリと反応し、不快そうな表情を浮かべた。


「あの掃除もすげぇよな」

「な! でも掃除魔法とかないのかな?」

「バカ! それじゃ動画のネタにならないだろ?」

「それもそうか」

「それよりさ。水滴集めて浮かせて、アップになったシーン、エロくなかったか?」

「俺も思った。あれ、絶対狙ってるよな?」

「な!」


 剛たちはそんなことを話しながらだらしない表情を浮かべている。


「そういやさ。あのパン、高くね?」

「な! リリちゃんの日給と同じ値段のパンとかやばくない?」

「日本だと日給って、どんくらい?」

「さあ? でも一、二万円くらいはもらえるんじゃね?」

「だよなぁ。高級食パンの店でもそんなにしないよな?」

「ああ。ケーキだってそんなにしないぜ?」

「それに、名前も意味不明だったよな。パンはパンなのになんであんなに種類があるんだ?」

「な! 最初のフランスパン二つとか、どう見ても一緒じゃん」

「俺も思った!」

「それにあの丸いパン、小さいよな」


 するとすかさず西川がその言葉に反応する。


「だよな。リリちゃんのパンはあのパン何個分だろうな?」

「ん? 西川、リリちゃんのパンってなんだ?」

「何言ってんだよ。俺ら、毎日見てるだろ? あの夢の詰まった大きなパン」

「……あ」

「そういうことか」

「たしかに……」


 剛たちも西川の言わんとしていたことが理解出来たようで、だらしない表情でうなずいた。するとそこへ藤田が不快そうな表情で近づいてきた。


「ちょっと、あんたたち。朝からなんて下品な会話しているのよ。場所を考えなさい」

「げっ」

「委員長?」

「大体ね。バタールとバゲットは別物よ? バゲットは一般的なフランスパンなのに対してバタールはバゲットと同じ生地で作るけど、太くして少し短めに焼き上げるの。だからクープって呼ばれるパンの切れ目も三つになるわ。バタールはフランス語で中間って意味で、焼き上がりはもっちりした食感になるのよ」

「お、おう。そうだったのか。委員長、やっぱり頭いいな」

「と、当然よ。それより、教室でそんな下品な会話するのはやめなさい?」

「あ、ああ。分かったよ。今度からは放課後にする」


 剛がそう答えると藤田は小さく頷き、席へと戻っていくのだった。


◆◇◆


「なあ、これ見ろよ」


 放課後、剛たち以外に誰もいなくなった教室で西川が自分のスマホに表示したShabetterの画面を見せてきた。


「お、バズってるじゃん!」

「この切り抜き動画、いいところをちゃんと切り抜いてくれるからなぁ」

「やっぱり水滴のシーンは使われてるよな」

「にしても、五千リシャベータはやべえだろ」

「な! トレンド入りしないかな?」

「タグがないからなぁ」

「なら、俺らでやってみようぜ。ハッシュタグはリリス・サキュアでいいかな?」

「おう」


 剛たちはそう決めると各々ハッシュタグを付けて引用リシャベータをした。


「これでリリちゃんのチャンネル登録、また爆増しそうだな」

「な! ……って、おい! 西川! サクランボを乗せたリリちゃんミルクパン食べたいってなんだよ!」

「うわぁ……さすがにそれは引くわ」

「え? お前らだって思ってるだろ?」

「そりゃそうだけど、Shabetterで呟くのはちょっと……」

「……」


 ドン引きする剛たちの様子に、西川は慌てて自身の呟きを削除するのだった。

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