第13話 日本では……(4)
自室で横になった剛はスマホの通知を確認する。
「お! リリちゃんの動画が二本もあるじゃん」
そう言ってだらしない表情になった剛はそのままコメント返しの動画を再生した。
「あー、こっちの動画のコメ返しかぁ。でも、コメ返ししてくれるってことは、ちゃんと読んでくれてるってことだよな。よし」
剛はだらしない表情のまま動画を一時停止し、『コスプレお願いします。メイド服、リリちゃんに絶対似合うと思います!』とコメントを書き込んだ。
他にもコスプレ希望のコメントがいくつか書かれており、スクロールしながらそれらをざっと確認した剛は満足げな表情を浮かべる。
「お、こいつらわかってんじゃん」
そう呟いた剛の目に一つのコメントが留まった。
「ん? 女性に興味? あー……」
剛はだらしない表情のまま虚空を見つめる。
「それ、アリだな。百合かぁ。やっぱリリちゃんだとネコか? あー、でもタチもギャップがあっていいかも」
何やら妄想しているのか、締まりのない表情でそう呟いた。
それから剛は一時停止していた動画の再生を再開し、やがて動画はゴブリンの股間のモザイクに関するシーンになった。
「ぶはっ! こんなって!」
人差し指を立てながら恥ずかしがっているリリスに剛は思わず噴き出した。
「やべぇ。麦茶飲んでなくてよかったぁ」
そう言いながら剛は枕元に置かれたティッシュに手を伸ばしたが、すぐにその手を引っ込める。
「あーマジかわいいわぁ。リリちゃんホント最高。この恥ずかしがる表情もそそるわぁ」
剛は動画を食い入るように見つめている。
そしてコメント返しの動画を最後まで見ると、次の動画の再生をする。画面には一生懸命に食レポをするリリスの姿が映し出されている。
「お、メシか。メニューはなんかあんまりインパクトないな。マンガ肉とか出てくれば面白いのに……って、滅茶苦茶幸せそうに食うな。いいなぁ。うまそう」
剛はそう言いながら、今日の夕食として出されたやたらと質の悪い冷凍ハンバーグを思い出す。
「今日の晩飯、まずかったもんなぁ。兄ちゃんがいたころはあんなの……」
剛はぼそりとそんなことを呟くが、すぐに画面に夢中になる。
「ぶっ。リリちゃん、顔に出すぎ」
剛はエールを飲んで微妙な表情を浮かべているリリスを見てまたもや噴き出した。
「エールってまずかったんだろうなぁ。でもエールってなんだ?」
そんなことを呟いているうちに、リリスは高評価、チャンネル登録のお願いをし、締めの台詞をしゃべった。
それを最後まで見た剛はすぐさまコメントを書き込む。
『次はぜひ、フランクフルトの食レポをしてください。バナナでもいいです』
それから剛はすぐに関連動画からリリスが魔法を使った動画を選び、再生するのだった。
どうやらメシマズだったようです。次回はロラン君がはじめての……? どうぞお楽しみに!