[短編]交差点近くの店を出たらティーボーンステーキをあなたと食べよう
『[短編]サイコロステーキよりティーボーンステーキとイルミネーションの思い出』(https://ncode.syosetu.com/n5378hi/)
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『[短編]雪だるまハンバーグとティーボーンステーキ』(https://ncode.syosetu.com/n0674hj/)
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『[短編]時計台前広場の屋台で食べたティーボーンステーキの思い出』
(https://ncode.syosetu.com/n4235hj/)
の続編。4話目。完結編。
《あらすじ》
『やっぱり、元カレの方が好きぃ〜』と叫び、ヤケ食いにステーキ店へ行ったら、元カレと遭遇。そして、復縁を求められる。
『来週24日の18時に交差点近くの店で待ってる』
安則のアドレス全消しのあたしに伝言を届けたのは、共通の友だち。
そして、サイコロステーキの人を紹介してくれた人でもあったりする。
「俺は伝書鳩でも、都合のいい仲人でもない」
「ごめん…」
察しのいい友だちは、
「ケジメだけはちゃんとしろよ」
と、それだけ言った。
日曜日。
食事のお礼をしたいとランチに誘った。
お得な食べ放題焼肉だ。
「…あなたに悪いところはなかったんです。
あたしがこんな女なだけです」
「…こういうのも好きだけど…そういうことじゃないんだね」
「ごめんなさい」
じゅうじゅうと、ホルモンの煙が目にしみた。
柔らかい何かを取りこぼしてしまった罪悪感が残った。
それでもケジメをつけないと、傷つけるだけだ。
相手も、あたし自身も。
24日。
仕事終わりの18時。
交差点に近いあの店に入る。
「…おつかれ」
「…うっす」
キラキラとした店内に、あたしは顔を俯けた。
「あの時、贈ると言って断られた指輪、今度は受け取ってくれるか?」
「…転職したばかりで、こんなバカ高いの要らないって言ったじゃない」
「婚約指輪だ。高くていいじゃないか」
「要らない」
「ほんと、可愛くない」
黙って転職して、黙って高い指輪を買おうとしていた安則に腹を立てたあたし。
結婚を断られたと思った安則。
時間を置いて考えたら、分かった。
あたしとの結婚に踏み切るために、転職した安則。
指輪が高いのも律儀に婚約指輪を贈ろうとしたから。
でも、あたしは婚約指輪は要らない。
「買うなら、ふたりでつける結婚指輪の方がいい」
顔が真っ赤になっているのは、わかる。
耳だってきっと真っ赤だ。
だって、安則も真っ赤な顔してるから、いいじゃない。
「…それと、もうちょっと話し合うようにしよう」
「うん」
「言わなくても通じる事が多いけど、それに甘えちゃダメだよな」
「うん」
「オレと結婚してくれるか?」
「…うん!」
この後、真っ赤なまま、ふたりで指輪を選んだ。
サイズ合わせを依頼して、外へ。
ものすごく寒い。
だから、思わず言っていた。
「ティーボーンステーキ食べたい」
「オレも」
よく考えたら、ティーボーンステーキって、ひとりじゃ食べられない。
いつも誰かと食べていた。
この先、一緒に食べるのは、きっとこの人だ。
あたしたちは、手を繋いでイルミネーションのある方へ向かった。
ふたりで、たくさん話をしよう。
そして、たくさん食べよう。
これからも、クリスマスをあなたと。
Happy Merry Christmas, with lots of love!
ʕ•ᴥ•ʔクリスマスケーキ、食べようぜ!