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第10話 三度目

 青い光が広角上に広がって時折白い光が折れ線グラフの様に進み、消える。


「システム起動、ワールド「ATYOS」へのアクセスを開始します」


「警告、このワールドへのアクセスには認証キーが必要です。……⁎⁎⁎⁎⁎⁎⁎⁎確認しました。ワールドへのアクセスを開始します」


「現在、1名のプレイヤーが参加中です。勢力を選択してください」


「勇者の仲間が選択されました。次に職業を選択してください」


「職業:ドラゴンナイトが選択されました。キャラクターメイキングを行いますか?行わない場合、全身スキャンから自動でキャラが作成されます」


「キャラクターメイキングを行いません。全身スキャンを行います。……完了。ランダムで最初の町を決定します。幸運を」


 青い光が一斉に走り出し、真っ白な光に視界が支配される。

 

 次に耳に入ったのは鳥の鳴き声。優しく木々を撫でる風の音と木漏れ日の中に少女はいた。辺りを見渡し、固く拳を握りしめた。


「……これがインフィニットオーサーの世界」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「召喚に成功しました。魔法陣の起動を終了します」


 三回目ともなると少しは慣れてくるものである。しかし、千春は別の事で頭が混乱していた。


「気分はどうですか勇者様」


 アシュレイは相変わらずのイケメンスマイルで手を差し伸べていた。


「いやいやいや、え?いやいやいや」

「……勇者様?」

「いやいやいや、え?まじで?」

「ど、どうかしたのですか勇者様?」


 アシュレイはいやいやだのまじかだのしきりに呟く千春の姿に狼狽していた。

 しかし、千春の混乱も無理もないことなのである。今までずっと男だと思っていたイケメン騎士に大きなおっぱいが付いていたのだ。千春もまさか現実で「お、お前女だったのかよー?」を体験することになるとは夢にも思わなかっただろう。しかし、どうにも腑に落ちない点が一つあるのだ。恐らく、アシュレイは自分が女であることを誰にも明かしていない。しかも、千春は以前夜の中庭でアシュレイとジュリア姫が愛の口づけしていたのを目撃している。姫はアシュレイが女であることを知っているのか。若しくはアシュレイがそういう性癖なのか。分からないことばかりである。


「ああ、悪かった。ちょっと混乱していた。王様の所に行くんだろ?行こうぜ」

「え?ああ、はい。勇者様が問題ないなら良いのですが」


 千春はようやく落ち着きを取り戻した。ここでいつまでもうだうだしているわけにはいかない。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「なあ、ちょっといいか?」


 三回目の王との謁見が終わって、アシュレイに部屋を案内された後、千春は部屋を抜け出して城内を歩いていた兵士を呼び止めた。


「ああ、勇者様でしたか。何かございましたか?」

「アシュレイのことなんだがな」

「騎士団長がどうかしたのですか?」


 ここまで来て千春は自分のノープランさに絶望した。いきなりアシュレイは本当に男なのかとか聞いたら怪しまれかねない。何か良い言い回しはないものかと千春は頭を捻った。


「アシュレイってかなりの美青年だよな?」

「……?そうですね」

「実は女だったみたいな噂ってないか?」


 結局良い言い回しを思いつかず思ったまま尋ねる千春。しかし、兵士はそれを聞いた途端弾けた様に笑い出した。


「あははは!!ぶっ、勇者様笑わせないで下さいよ。そんなことあるわけないじゃないですか」

「そ、そうか。いや、あれだけの美形だとそう言ったこともあるんじゃないかと思ってな」

「ないない。そりゃないですよ勇者様。第一、私何回かアシュレイ様の裸を見てますし」


 衝撃の事実だった。千春はつい、食いつかんばかりに兵士に詰め寄る。


「ほ、本当か!!裸を見たのか?いつだ!?」

「ちょ、ちょっと痛いですよ勇者様。いつって、稽古の後は井戸で水浴びをするのでその時にみんな大抵上半身裸になってますよ。女なんてありえません」


 どうやら、アシュレイが女という事実は無いようだ。しかし、千春は確かにアシュレイのおっぱいを見たのだ。これは一体どういうことなのだろうか。


「分かったよ、ありがとな。あと、このことは他言無用で頼むぞ。アシュレイの弱みを探してたなんてバレたらアシュレイに殺されかねない」

「あはは、なるほどそういう事でしたか。分かりましたよ。勇者様の頼みですからね。黙っておきますよ」

「おお、恩に着るよ。それじゃあな」


 千春は兵士にお礼を言うと急いで部屋に戻るのだった。予定ではそろそろ部屋にアシュレイが来る筈だ。


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