5話:サモンアンデッド
「許して欲しいじゃないわよ! 事前に言いなさい!」
「悪かったって。ここまで上手く行くとは思わなかった」
「……まあいいわ。おかげで、ボックスに運ぶのが楽になったわ」
そう言ってフランがせっせとバケツで砂や骨を集めてはボックスに入れていく。
ゴブリンの骨は結構魔力が回復するけど、砂はぶっちゃけさほど足しにはならないと思ったら、ウィンドウのストック欄というところに、砂の壁が一枚表示されていた。
なるほど、壊れた建材の素材を一定数集めると、建材そのものに還元してくれるようだ。めちゃくちゃ便利だな!
そうして気付けば、魔力がもう上限の160近くまで回復していた。
「フラン、骨はとっておこう。もうだいぶ回復したから、緊急用に残しておく方がいいな」
「じゃあ、もういい? 結構疲れたわ」
「お疲れさん。ベッドで休むと良いよ」
「ふあーい。そう言われたら……眠く……なってきた」
ふらふらと家の中に入り、フランは倒れ込むようにベッドへとダイブ。そのまま寝てしまった。相変わらず寝付きが良い。
俺はその平和な寝顔を見て、ほっこりしたあと、【建材創作】のリストを見つつ、今後の計画を立てることにした。フラン曰く、夕方から夜にかけてモンスターは活発に動くそうなので、昼の間に準備しておくと良いそうだ。
夜までに、今夜を乗り切る方法を考えないとなあ。
とりあえずまずは、次のランクアップを考えてみる。壁材としては、【レンガ】と【鉄壁】が出ていた。どっちもかなり耐久度が上がりそうだが、消費魔力が分からない以上、使うのは少し躊躇ってしまう。
内装品も色々とあるが、フランはどうやら睡眠以外は必要としていないらしい。なので、最低限ベッドがあれば生活は出来そうだ。とはいえ、それだけでは寂しいのでテーブルやら椅子やらも用意したいが……まあこれは後回しだ。食事も必要としていないようで、大変助かるが、味気ない生活だなとも思う。
もう少し余裕が出たら、何とかしてあげようと思う。何というか、親ってこういう気分なんだろうな……多分。前世の俺は子供どころか、結婚すらしていないと思うが。
ドアも鉄製のが出ているが、これも様子見。耐久度が多少上がった今、これがどこまで通用するのかが分からないのが難点だ。ゴブリンぐらいなら、問題なさそうに見えるが……。ゴブリンだけとも限らないしね。
「とはいえ、使ってみないことには分からんか」
悩ましい。
と思っていると、いつの間にか見慣れぬスキルが発現していた。
【サモンアンデッドLv1】――モンスター素材と僅かな魔力を消費して、低級アンデッド系モンスターを召喚する。
「これってモンスター召喚系スキルじゃないか!?」
見るとそれもリストになっており、表示されていたのは一つだけだった。
・アンデッドインプ
どうやらゴブリンの骨をリサイクルボックスで取り込んだおかげで、発現したスキルのようだ。スキルはランクアップで覚えるだけではみたいだ。
いずれにせよ、防衛戦力に直結するスキルなので俺は試しに使ってみる事にした。残しておいたゴブリンの骨を使うのはちと惜しいが、魔力消費量は僅かと書かれているので、問題ないだろう。
「――【サモンアンデッド】!」
スキルを使うと、リサイクルボックスの脇にストック用に置いてあったゴブリンの骨が数本消えた。代わりに、家の前に骨の棍棒を持った小さな骸骨が二体出現。
「一回で二体出るのか。それとも消費する骨の量と魔力量で変わるとか?」
魔力を見れば10しか消費していない。一体辺り5と考えると、悪くない。だけど、骨を使うからなあ……。
ありがちな、リキャストタイムとかもあるのかと思ったが、どうやらなさそうだ。つまり素材と魔力さえあれば無限に召喚できそうな気配がある。
彼らが、のそのそと動きはじめる。しばらく見ていると、まるで警護するかのように家の周囲を歩き始めた。
ステータスを見てみる。
***
名称 :アンデッドインプ
レベル :1
体力 :50/50
魔力 :0/0
所有スキル:【組み直し】【ハードヒット】
***
ガーゴイルの俺に比べるとやっぱり弱いな。ただ、スキルを見ると悪くないように見えた。
【組み直し】――体力が尽きても、その場に骨系アイテムがあればそれを使って復活する事ができる。
【ハードヒット】――相手を気絶させる渾身の一撃を放つ。
骨を消費するとはいえ、アンデッド系モンスターらしく復活できるのは単純に強い。
骨系アイテムを消費して復活ということは、本来召喚する時に消費する魔力分が浮くってことだ。まあ、こいつに限っていえば魔力消費量は僅かなのであまり意味ないかもしれないが、ちょっとでも節約できるならをしたいところだ。
さらに攻撃系スキルまである。気絶ってのがどれほどの効果があるのか分からないが、あっても損はないはずだ。
さらに見ると、細かく指示も出せるようだ。迎撃は勿論のこと、骨や砂を集めるなどの雑用も出来るようで安心した。
これで、フランの負担がだいぶ減りそうだ。
試しに指示を出してみると、二体がバケツで黙々と砂を汲み始める。
「使えるな……」
砂の壁のストックがまた一枚増えたのを見て、俺はさて、このアンデッドインプと壁殺法でどこまでやれるかを考えていた。
リストを見れば、使えそうな物がいくつかあるな。それに、この砂と地形操作を使えば……面白いことが出来そうだ。
上を見上げると、空は既に暗くなっていた。
夜が再び――やってくる。
主人公はかなりのゲーマーです。タワーディフェンス系もやり込んでいるので手慣れていますね