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19話:返事待ちと古い坑道


「ハイランド鉱石と坑道の権利を?」


 ノクラが目を細め、警戒するような声を出した。まあ、この村の生命線だもんね。当然そうなる。


「はい。勿論、そこで発生した利益や資産も全てこちらの物ということに。その代わりに、この村を恒久的にあらゆる外敵から護るという、契約です」

「……聖女アストラエ様。貴女は一体この見放された土地で何を企んでいるのです?」

「私と私の仲間は、()()()()()()()()()。そのためには人も資金も必要なんです。ならばまずは……この村が足がかりとなります。当然、山賊達と同じように武力で支配しても良いのですが……私がそれを許しません」


 フランがなんていうか分からないが、少なくとも俺もそういうスタンスだ。まあ……彼らが想像する平和とはまた違うかもしれないが。


「ベレンズ辺境伯と事を構える気ですか? 見放されたと言っても、派手に動けば流石に気付かれますよ」

「それも交渉次第ですよ。私達が提供するのは防衛力、さらに採掘についても色々とお手伝いできるかと」

「……このまま山賊達に寄生され続けていたら遠くない未来、この村は破綻していたでしょう。そこに関しては感謝をしてもしきれません。ですが、それとこれは話が別です。村の代表者として、坑道も採掘権は誰にも譲れません。それがこの村の歴史であり、宝であるからです」


 ノクラはそう言ってキッパリとこちらの要求を断った。


「……山賊達がいなくなったにせよ、ベレンズ辺境伯の下のままでは、いつかはこの村は滅びる運命ですよ。それでも固執されるのですか? 勿論私達に任せてくださるなら、得た利益は村に還元するつもりです。採掘については当然これまで通り行っていただいても構いませんし、それで得られた鉱石はこちらで高く買い取らせてもらいます。さらに有る程度利益が出ましたらこの村をもっと発展させるつもりです。私達は支配をしたいのではありません。目指しているのは()()です」


 俺の考えをそのままアストラエは言ってくれた。


「聖女アストラエ様……貴女は、いや貴女の裏にいるのは……何者なんです? 追放された貴女にそんな力があるとは思えません」

「でしょうね。私もそう思います。ですが、実際問題として山賊達を討伐できました。その力があることだけは認めていただけるかと」

「それはそうですが」

「あとは、そちら次第です。山賊達が居なくなって一時的な平和は戻ったかもしれませんが、根本的なところを解決しないと滅びの運命は避けられません。果たして若者達は戻ってくるのでしょうか、採掘をいつまでも村民だけで行えるのでしょうか」

「それは……」


 若者達がどこへ退避しているのか分からないが、滅びいく故郷に戻る人はどれほどいるのだろうか。


「話は以上です。もちろん今すぐ返事を出せないでしょう。しばらくこの村に滞在させていただいてもよろしいですか?」

「それは勿論構いませんが……」

「では、ご検討をお願いいたします。出来れば、教会か修道院があればそちらで寝泊まりしますが」

「……申し訳ございません。この村には、レーア教の教会も修道院もございません。アストラエ様さえ構わなければこの家に滞在していただくのが一番かと思います。なんせ旅人なんて来ない土地なので、宿屋もありません」

「では、ご厚意に甘えさせていただきます」


 こうして、ノクラとの最初の会談が終わった。


 用意された部屋に入ると、アストラエは大きく息を吐いた。


「ふー……」

『お疲れ様』

「……仮にも聖女である私になんてことをさせるんですか」


 アストラエが恨めしそうにそう呟いた。


『フランや俺がやるよりはマシだろ』

「それはそうですが……。ですが、良いのですがあのような事を言ってしまって。護衛力はともかくとして鉱石を高く買い取るだの、村を発展させるだの」

『出来れば良いなあ……』

「そんなふわふわした感じで交渉をしないでください……」


 すみません……。


『いやあ、だってフランに任せたらとりあえず村を制圧しましょうで終わるぞ』

「それは……そうですが……」

『とにかく、ノクラ村長の結論を待とうか』

「はい。中々に難しいかと思いますが」


 まあ……そうなったらまた別のやり方を考えよう。俺がゆくゆくやりたいことをするには、一から作るよりも既存の物を使う方が早いと思ったからこうして交渉をしているのだ。まあ無理ならのんびりやるしかない。


 結局、三日経ってもノクラからは結論が伝えられなかった。


☆☆☆


「おっそいわねえ」


 フランが暇そうに俺の台座の横に作った長椅子に腰掛けて足をぷらぷらさせている。


「仕方ない。村の存亡が掛かっているんだ。そう簡単に結論は出ないさ」


 俺は意識をこっちに戻しつつフランに言葉を返す。


「さっさとモンスターけしかけて脅した方が早いわ」

「そんなんだから、魔王なんて言われ討伐されてこうやって落ちぶれてるんだろ。反省しろ」

「……馬鹿ガル」


 拗ねたフランがそっぽを向く。悪かったって。


「あ、そういえばこの岩窟を調べたら隠し通路があって、古い坑道っぽいところに繋がってたぞ。まあ、その先は魔王城外って判定で、それ以上は視点移動できないんだが……」


 俺が話題を変えると、フランがチラリとこちらへと視線を向けた。


「へ、へー。話を聞く限り、その村に繋がっているんじゃないの? 面白そうね」

「そうなんだよなあ。探索したいんだが、俺は行けないし……アストラエは村だし……」


 チラチラとフランの方へと目線を送る。


「……そこまで言うなら、私が行ってあげても良いわよ!」


 ずっと暇そうにしてたんだよな、この魔王。寝るのにも飽きたらしい。


「なら、ちと探索してみるか? 護衛のモンスターも付けるし俺も意識だけになるけど一緒に行くし」

「ダンジョン扱いなら良かったんだけどねえ」

「ダンジョンってそこら中にあるわけではないんだろ? そもそもこんな岩窟がダンジョンだったのが意外だったよ」

「そうなのよねえ……それが少し気になるわ。ま、じゃあ行きましょうか」


 そう言ってフランがぴょんと椅子から立ち上がると、スタスタと歩いて行く。


「待て待て。準備が色々いるんだよ」

「だったら早くしなさい」

「へいへい」


 こうして俺とフランは、ノクラからの返事を待つ傍らで岩窟から繋がる古い坑道を探索する事になった。


どこまでがダンジョンかの判定には厳密なルールがあるのですが……そこについてはまた本文にて


しばらく投稿が不定期になります~

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ハイファン新作です! かつては敵同士だった最強の魔術師とエルフの王女が国を再建する話です! こちらもよろしくお願いします。

平和になったので用済みだと処刑された最強の軍用魔術師、敗戦国のエルフ姫に英雄召喚されたので国家再建に手を貸すことに。祖国よ邪魔するのは良いがその魔術作ったの俺なので効かないし、こっちの魔力は無限だが?



興味ある方は是非読んでみてください
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