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11話:荒野行動


「ねえ、ガル」

「なんだフラン」

「あんたに任せるって言ったけど」

「うむ」

「ちょっとだけ言わせてもらっていい?」

「そういうのって大概〝ちょっと〟ではすまないよな」

「なんで……なんで()()()()()()()()()!!」


 ……窓から顔を出すフランが風で銀髪を揺らしながら、俺を見上げて怒鳴る。


 まあそうだよね。俺だってきっとそう言うだろう。


 なぜなら。


 俺と俺の本体であるこの家は、フランやアンデッドインプ達を乗せて――()()()()()()()()


「おっと、岩に乗り上げるぞ、どっか掴まってお――」

「ぎゃああ!!」


 岩に乗り上げたせいで、家全体が揺れ、フランが悲鳴を上げた。


「岩を削るのにちょっと時間掛かるから、揺れるのは我慢してくれ」

「舌を噛みそうになったじゃない! というか早く説明しなさい!! 動く魔王城なんて聞いた事ないわ!!」


 さて、なぜ家に足やタイヤが生えた訳でもないのに、荒野を快速で移動出来ているのか。

 その理屈はとてもシンプルだ。


 まず地形操作は、半径25m前後の地形を操作できるスキルだ。で、例えばよそから持ってきた砂とか石――俺が作った壁や石柱の残骸――でも、それが一度地面に触れさせすれば地形扱いになるらしく、ある程度物理法則を無視して動かせるのだ。


 そうやって石混じりの砂をスキルを使って高速で動かした結果――地面が削れて更に砂が増えた。この荒れ地が元々岩混じりの砂地なせいか、あっけなく家の周囲は砂だらけになった。


 あとは簡単だ。家の床の下も削って砂にすると、そこだけ固めて沈まないようにして――砂全体を前へと動かす。


 するとあら不思議、まるで流砂のように砂が流れ、当然その上に浮かぶ家も前へと進む。そして家が進めば、俺の地形操作の範囲も前へと進むので、進んだ先の地面を削って砂にして……の繰り返しだ。


 つまり、常に流砂を作りながら進んでいるってことだな。


「地形操作ってそんなこと出来るんだ……」

「俺もびっくりしたよ。まあ後ろは砂漠になるが」


 後方を見れば、まるでなめくじが這った跡のように、荒野に俺達が通った跡が砂によって描かれている。


「ほら、元々草も生えない荒れ地だし、構わないだろ」


 俺は、先を行くアストラエの鳥の先導を見て、微妙に進行方向を変える。この速度でいけば、夜までには着くが……。


「というか着いたらどうする気よ」

「……」


 考えてなかった。まあ何とかなるだろ。

 山賊のアジトって言ってもどうせボロ小屋だろうし、横付けして一気に叩き潰す作戦で良いだろうさ。


「斥候隊を出すような規模の山賊がそんなチャチなアジトを作らないと思うけど」

「……まあ見てから考えよう!!」


 為せば為る!!


 なんて言っていると前方に巨大な岩が見え始めた。荒野にポツンと佇んでいるが、小さな山ぐらいのでかさだ。


「ぴゅいぴゅい!!」

「あれ、らしいわよ。アジト」


 フランが翻訳してくれたんだが、あれがアジト?


 と思って見ていると、確かに岩に穴が空いていて、木で出来た粗末な門がそれを閉ざしている。どうやら、天然の洞窟? を利用したアジトらしいが……。


「わりとガチなアジトだ」

「どうするのよ!」

「迷ってる時間はない。アストラエちゃんがいつ何されるか分からんしな」

「まさか正面突破する気!?」

「俺に策がある!!」


 俺はそのまま家をアジトへと一直線に向かわせる。アジトの門の周辺には山賊達がたむろしていて、そいつらが中に入るつもりなのか、門が開き始めた。


「チャンス到来だ――フラン、シートベルトはしっかり締めておけよ!!」

「し、しーとべるとってなに――ぎゃあああ!!」


 俺は流砂のスピードを全開にして進む。こういうのは勢いが肝心だ。フランが転んだらしいがまあ仕方ないだろう。


 下手に迷うと、相手に反撃の余地を与えてしまう。


「お、おい!! なんだあれ!!」

「……小屋?」

「小屋が動くかよ!!」

「というか……こっちに向かって来てるぞ!!」

「だ、誰か、応援を――」


 山賊のあわてふためく顔が見える距離まで迫った俺はそのまま門へと突っ込む。目の前に迫る洞窟はそれなりに広く、すっぽりと家が入るから、激突する心配はない。


「砂があああああ」

「ぎゃああああああ」


 間一髪、俺の突撃を躱した山賊達だが流砂に巻き込まれて、悲鳴を上げている。


「突撃!!」


 俺はそのまま洞窟の中へと入ると家を停止させ、同時に背後へと砂壁を複数枚設置。洞窟の入口を上部だけ空けて塞ぐ。


 道中に手に入った砂をちょっとずつリサイクルボックスに入れていたおかげで実は結構、砂壁のストックが出来ていたのだ。


 うっし、これで背後から襲われる憂いはないな。


「この馬鹿ガルぅううう!!」


 あ、フランがめちゃくちゃ怒ってる。


「あんた、何してんのよ!! 突撃するならするって言いなさい!!」

「いやあ、すまん。なんか、家が思ったより速く動かせるから……ちょっとだけテンション上がってしまった……」


 スピードは人を狂わせる……。冷静になると、俺は何をやっているんだろうか。それに妙だな。なんだか変な感覚だ。いや、確かに洞窟の中なんだけど……なぜだろうか……〝まるで何かの腹の中にいる〟……そんな感覚なのだ。


「馬鹿ガル!! どうすんのよ今から!!」


 腰に手を当てて怒っているフラン。可愛いらしい声が洞窟に響き渡る。


「あー、フラン様」

「何よ!!」

「あんまり大きい声を出すと……ほら、洞窟だから響くのよね」

「分かってるわよ!! だから何なの!!」

「うん。つまり――()()()()()()()()()()って事だ」


 前方から……山賊の集団がこちらへと走ってきている。武器は既に抜いており、完全に戦闘態勢だ。


「なんだありゃあああ!?」

「知るか!! ぶっ壊せ!!」


 やれやれ。さて、こうなっては仕方ない。とりあえず違和感は置いといて、迎撃しますか。


 俺は荒野を移動している間に、地面に埋まっていた謎の骨も実は砂と一緒に回収していたのだ。どうもこの荒野は戦場跡だったのか、骨が大量に埋まっていた。


 つまり――()()()()は沢山あるわけだ。


「――サモンアンデッド」


 俺の家の前に――20体近くのアンデッドインプ達が召喚された。更に地形操作で家の正面には砂穴を作る。流石に外と違って、洞窟内なのでめちゃくちゃ目立つが、それで良い。


「うっし、じゃあ、軍師ガルの戦い、見せてやりますか!」


 俺による山賊のアジト攻略戦が今――始まる。

 

地形操作万能説。

いやいや無理やろ! というツッコミもあるかと思いますが、まあフィクションなので許してください!

というわけで、次話から山賊VSガルさんが始まります。お楽しみに!

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ハイファン新作です! かつては敵同士だった最強の魔術師とエルフの王女が国を再建する話です! こちらもよろしくお願いします。

平和になったので用済みだと処刑された最強の軍用魔術師、敗戦国のエルフ姫に英雄召喚されたので国家再建に手を貸すことに。祖国よ邪魔するのは良いがその魔術作ったの俺なので効かないし、こっちの魔力は無限だが?



興味ある方は是非読んでみてください
― 新着の感想 ―
[良い点] フランの動く家 アストラエ「ガルシファー!あなたのスキルは一流ね!」 ガル「骨と砂があれば、もっとすごいぞ!」
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