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或いはこんな転生物語  作者: 仙坂生徒
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立山英夫ー1

二部構成です

誰もが憧れるような大きく煌びやかな豪邸に住む立山家は父母息子の三人。父は国会議員の中でも優秀でその敏腕を振るって日々国のために身を粉にして働いている。母は近所でも評判な有識者であり、皆が相談に行き解決に導いてくれる。彼らの人柄は素晴らしく周りの人間達から強い信頼を得ている。

しかし、誰も知らない。この家族の唯一の汚点を。


「マズい!もっと味は濃くしろっていつも言ってんだろうが!!」


運動もろくにしないためか、丸々と太ってしまった男は食卓についてテレビを見ながら食事していた。すると男は料理を気に入らなかったのか突然ま残っている皿をキッチンで洗い物をしている母親に投げつけた。


「ッ!!……ごめんなさい。すぐに作り直すわ」


「いらねーよ!もう部屋に戻るからさっさといつものピザとコーラ持ってこい!!」


男はドシッドシッと大きな音を響かせながら二階の自室に戻っていった。残された母親は涙ぐみながら電話をかけ始めた。


+ + +


特大のソファに体を預け、男は録画していた深夜アニメを上機嫌で観ていた。


「やっぱり最近は異世界転生ものが最高だなー。でも俺ならもっと上手くやるしもっとハーレム軍団増やしてやるのになぁ」


ぐふふと笑いながら一掴みしたポテトチップスを口にし、その際溢れたかすを気にする様子はない。それどころか男がいる部屋は辺り一面ゴミが散乱し、足の踏み場もないほどになっている。もちろん、男が寝ているソファの上にもゴミは散らかっているのだが、男は構わずその上で寝転んでいる。この部屋は本来備わっているはずの優雅さはなく、見る者によっては嫌悪感を持つ者もいるかもしれない。


ーーーーキィと突然ドアを開く音が聞こえた。


「ババア!ドア勝手に開けんな!!ピザとコーラはドアの前に置いとけ!……え?」


そう言いながら後ろを振り向くとゴルフクラブを振りかぶった父親がいた。そして間髪いれず男の頭へとフルスイングした。


「だッ!?」


殴られた男はその勢いのまま吹き飛ばされ短い悲鳴とともに絶命した。


「さっき母さんから電話があった。三十年ずっと我慢してきたがこの様な結末を迎えさせてしまってすまない。育て方の悪かった私達を許してくれ」


「うぅぅ」と壁を隔てた奥から母親は涙する。その疲れきった表情から流れる涙は一体何に対する涙なのか他の者に察することはきっとできないだろう。


「すまない、英夫。私達も責任を果たしてからすぐに後を追うから許してくれ」


こうして一つの家族の悲惨な惨状は幕を下ろした。


+ + +


「あん?どこだここ?」


立山英夫が起きたその場所はふわふわと綿菓子のような地面が地平線が見えるほどに続いている。まるで雲の上にいるかのように英夫は感じた。


「ようやく目を覚ましましたか」


後ろから声が聞こえばっと英夫は振り返る。そこには白いローブを着た二十歳くらいであろう金髪の青年が立っていた。


「誰だ、お前?」


「私は転生の神ラ「転生!?て言うことは俺は異世界に行けるのか!?」……そうですね。憐れな死を迎えた貴方にもう一度だけチャンスを与えましょう」


そう言って神を名乗る男は右手を上げる。すると突然ボウリングの玉くらいの大きさ球体が現れるがそれは英夫も何度か見たことのあるものに似ていた。


「それは地球か?」


男の右手の上に浮いている球体は正しく地球儀のようで、男はこくりと頷いた。


「貴方には二つ選択肢を与えましょう。一つは再び地球での誕生。もちろん前の家族とは関係ない別の家族の元で「はあ!?なんでまた地球なんだよ!!転生ものって言ったら異世界が定番だろう!!そんなことも知らねーのかよ!!」…………ならばもう一つの選択肢。地球とは異なり、科学が発達せず魔法が体系化された世界テトラスへの転生でよろしいですか?」


「おう!」


魔法や異世界のことを聞くと英夫は胸を熱くする。自分が求めていたものを提示されたのだ。興奮しない者などいるはずないだろう。英夫は即答した。


「おい、神様。テトラス?とかいう世界に行くにあたってなんか特典とかないの?」


「……特典ですか?」


「全ての魔法が使えるとか最強のモンスターを使役できるとかさあ!でないと俺のやる気が起きないだろうが!!そんなことも知らないなんて神のくせに何勉強してんだよ」


まさか転生される身でありながらここまで図々しく要求してくる者が現れるとは思ってもなかったのだろう。男は小さくため息をついた。


「……現時点での貴方はテトラスで生きていく上では不都合が多い。なので僅かではありますが若返らせ、その多い脂肪もなくしましょう」


「そんなのは基本だろうが!俺が言ってんのはチートスキルのことを言ってんだよ!!神様なんだからそれくらいできるだろうが!!」


英夫は掴みかかろうとするが男はふわりと浮き上がり祈るように両手を合わせて瞳を閉じた。


「ーーーーこの憐れな魂に新たなる人生を」


男がそう言うと天から光が差し込み英夫を照らす。


「おい、まだ俺はなんももらってねーぞ!ふざけんな!!」


叫ぶ英夫が光の中から出ようとするが、何かの力ではばかれるのか出ることは叶わない。

そうして、徐々に光は消えていき、光の中にいた英夫もまた同じように消えていった。




色んな異世界ものあるけどこういうのがあってもいいかなと思って投稿しました。

よろしくお願いします。

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