001「出会う」
春風が花びらと共に流れてくる、その風を全身で感じながら、僕は美容室に入る、準備が整い次第、お客様の相手をする。でも今日の僕はある一人の女性を心待ちにしていた、彼女のことを考えると心臓の鼓動が早くなり、時間が遅く感じてしまう、そうして時間が過ぎていくのを待ちつづける、そしてようやく彼女がやってきた、春を感じさせる桜色のした長髪、その髪から香るやさしい甘い香り、いつも笑顔で入ってきてくれる彼女、僕はすぐ彼女の元に駆けつけ接客をする、彼女はふふっ、と笑ったあとで「今回もよろしくお願いします。」
僕は照れながらも彼女を席まで案内し、ヘアダイクロスを通す。
「い、いつもの・・・ですよね?」
「はい、お願いします。」
この会話だけで僕は心が満たされる、言い過ぎかもしれんが周りの空気がガラッと変わる。
そうあの日、彼女がこの店に来てから僕、影野紳真は・・・
枕崎姫香に恋している・・・
001:「出会う」
三月、春が訪れ、桜が咲き始める季節であり、また別れの季節でもある。まぁ僕には別れの季節なんてものはもうないのだけれど、そんなことを呟きながら僕は私服に着替え、職場に向かう。
僕、影野紳真は26歳の美容師である、専門学校を卒業したため20歳に就職した、6年間人の髪を切り続けている、職場もまぁまぁいい所に就職できたため、今の生活に満足している。10時なったので僕は家を出ることにした、職場まで歩きで20分かかるため車で行った方が早くて楽なのだが、僕の日課で職場に向かう時はいつも川を見ながら桜並木の道を通ることにしている、元々住んでいた家が川に近かった影響か川を見ていると何故か落ち着くため歩くことにした、10時20分頃に職場に着いた、店の名前は「Red string」
まぁ意味はそのまま「赤い糸」あなたとの出会いがいつだって私たちの幸せであり、大切だという意味らしい、この店の開店時間は12時だが美容師の朝はやることが結構ある、店内の掃除や鏡を拭いたり、洗濯したタオルを所定の場所に戻したりなどで忙しい、作業を進めていると徐々に店員が増えていき、そして開店時間の12時になった。今日は土曜日なのでそれなりに忙しい1日になることは覚悟していた、そして開店直後に入ってくる1人の女性がそこに立っていた。職場のみんなが「いらっしゃいませ」っとハッキリ言ったのに対して僕はそのいらっしゃいませが段々静かになってしまっていた、その人は春を感じさせる桜色の長髪をしており、ワイシャツの上にピンクのセーターと赤いロングスカート着こなし、顔立ちの整った綺麗な女性がそこに立っていたのだから・・・
続く