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どんなお仕事も大変です。

私付きの護衛騎士となってくださったグレン様だが、主に日中の護衛をしてくださる模様。


何故なら私を含む乙女の部屋は一角に纏まって用意されており、夜間~早朝にかけては後宮扱い。護衛も全て近辺は女性騎士。そこから離れたところに男性騎士が配置されているらしい。


そんな訳でグレン様と2度目に会うのは必然的に朝食の後だった。




ダイニングルームに迎えに来たグレン様は眼前の光景に少し固まっていた。……わかる。


「なんというか……目のやり場に困るな……」

「あ、やっぱりそう思いますか……」


キラキラエロスが3体も出現しているのだ。

眩しいことこの上ない。目が疲れる。


「……君も随分と可愛らしいな」

「はは……ありがとうございます」

「…………」


紳士の礼儀として一応褒めてくれたのだろう。

しかし私はおそらく死んだ魚の様な目で、乾いた笑いを返してしまいグレン様はちょっと戸惑っていた。



皆様の露出のお陰で、私の露出などささやかに見えるようで有り難い限りではあるが、だからといってこれはない。

確かに服は可愛いが、そんなキャラじゃないし趣味でもない。


あと、丈が短い。

長くても趣味じゃないことには変わりないけど、とにかく丈が短い。

膝下とまでは言わなくても、本来膝丈位が私の限界値だ。



「君は随分と市井で働いているときとイメージが違うようだ」

「……私の事をご存知なのですか?」

「当然だ、護衛対象だからな。もっとも、知っているのは書類上でだが」

「はぁ……成程。大変なんですね、騎士様も」



どうでもいい事を覚えさせられて。



そう思いながらも、一応はどんな事が書かれていたのか聞いてみると“笑顔が眩しい市井のアイドル”だそうな。

……これはまた随分と盛られている。


「君の店に行った部下からもそう聞いているが……やはり慣れない環境は辛いのか?」

「いいえ。ですがあれは営業スマイルなので」


乙女が“聖獣と話せる”という能力職であるなら無駄に愛想を振り撒く必要はない。


ウエイトレスという仕事も“給仕”なので殊更愛想を振り撒く必要もないのだが、接客能力により時給が変わるため“愛想”は非常に大切だ。

あくまで“給仕”の接客能力の“愛想”であるため、トラブル対応以外の会話術を必要としないのも、盛られた原因のひとつかもしれない。


「もともと表情豊かな方ではないので“お仕事モード”に入らないと思い切った笑顔が出ないんです」


そう言うとグレン様は意外なことに、納得した感じで頷いてくれた。


「そういう気持ちは俺にもわからんではない。働くというのはある種、役割を演じる事だ」


騎士とか大変そうだもんな~。


しかし、この人もほどほどにイケメン。

他の姉さん達の護衛ならそれこそロマンスも生まれそうなもんだ。

生まれなくとも目の保養にはなる。


なのによりにもよって私の護衛じゃ、なにひとつおいしくない。


…………役割を演じているグレン様に同情を禁じ得ない。




「グレン隊長、おはようございます」


女性騎士であるアナベラ様がビシッと敬礼をした。

……っていうか、


「……隊長?」

「なんだ、知らないのか?グレン隊長は王都近衛兵第一部隊、隊長だ」

「ええぇぇ?!」


呆れたようにアナベラ様が言った言葉に私は絶叫した。私は騎士の階級なんてよくは知らんが……おそらくエリート中のエリート。

そんなお方がなんで私の護衛なんぞをせねばならぬ。……益々気の毒。


「グレン隊長はお強いのだぞ」

「そりゃ、そうでしょうとも……」

「やめないか、アナベラ……」


目が更に澱み続ける私の斜め前で、グレン隊長はあきらかに嫌そうな顔をしてアナベラ様を見る。

アナベラ様は「別にいいじゃないか」という感じで、少しだけ不思議そうにグレン隊長を眺めたものの「では失礼致します」と再び敬礼をして行ってしまった。


「クローディアさん……行こう。聖獣様は?」

「あれ?……あんなところに」


毛玉様は満腹になったからか、空いている椅子で寝てた。

食う、キレる、寝る。毛玉様……自由だな。


気付いたら皆様もそれぞれ戻ってしまっていて、扉の外で宮殿のメイドさんらが部屋を片付ける為待機していた。


「どうもお待たせしてすいません……御馳走様でした」


グレン隊長が毛玉様を上手く回収してくれたので、メイドさん達に謝りながら部屋を出ると物凄く恐縮される。

それに更に恐縮する私にグレン隊長が笑っていた。




グレン隊長の抱き方や撫で方がとても上手いようで、毛玉様は時折『この葉っぱ甘くてオイシィ~』など、普段より可愛らしい寝言を発しながら、全く起きる気配がない。


結局時間ギリギリまでグレン隊長に毛玉様を抱かせてしまった。


「………本当、申し訳ない」

「いや、むしろ嬉しい位だ。昔から動物が好きだったのだが、何故か動物には好かれる事がなくてな……こんなに触らせてくれるなんて感動している」


グレン隊長は優しく目を細めてそう言った。




“隊長にこんな任務をさせて甚だ申し訳ない”と思っていた私は、初めて毛玉様に感謝した。


よく考えたら毛玉様が私を選ばなければそんなこと思わなかった訳だから、感謝する必要もないな……と気付くまでだが。


閲覧ありがとうございます。


また登場人物の名前間違えるミスをやらかしました。

…………このミス多い!

名前ちゃんと覚えな……

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