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1-0 羨ましきハーレム

※この物語はフィクションであり、非現実的要素及び戦闘描写を多分に含みます。

 出てくる神や地名など、あらゆる固有名詞が同一であっても現実との関係を保証するものではありません。

 ストックは14万字程度あります。


――これは本気でヤバい事になった。


 病室のベッドに横たわる彼の近くには、4人の少女がいた。皆それぞれ一歩も譲らないと言わんばかりに闘志を燃やしており、いつ喧嘩が始まってもおかしくない状態だ。


「だから、秋人の看病は私1人で十分だって言ってるじゃない!」


 と、キッと睨みながら言ったのは、背中にまでかかったプラチナブロンドの長い髪が特徴的な少女。

 頭には可愛らしい黒のカチューシャを付けており、フリルのついたワンピースの胸元には大きな白いリボンが付けられている。怒っていながらも、その立ち振る舞いには気品を感じさせるものがあり、高貴なお嬢様であるということは見てとれた。


「それはこっちの台詞ですよ咲夜さん! 私は一度秋人さんに看病してもらいました。ですから今度は私がする番なんです!」


 そう言って少女を牽制(けんせい)するのは、大きな胸と、燃えるような髪が特徴的な少女。上は白いシャツにカーディガンしか着ていないためか、たわわに実った胸がより強調されて見える。


「何を言っている。秋人の看病をするのは私だ。お前達は、黙って見ているだけで良い」


 凛とした声で告げたのは黒いショートカットの髪が特徴的な少女。顔には般若のような鬼のような仮面を被っており全容は分からない。ライダージャケットを着用し、下はスカートという変わった組み合わせのファッションをしていた。


「秋人~入院中暇だろ? ゲーム持ってきたからあたしと一緒にやろう!」


 3人が言い争いをしてる中、秋人のベッドサイドにまでやってきて顔を覗かせたのは、長いまつ毛に金髪のツインテールが特徴的な強気そうな少女。まだ幼さが残る声色をしており、この中では最年少であることがうかがえる。


「馬鹿者! 病人にゲームを勧めるなど何を考えてるんだ貴様は! ダメに決まっているだろう」


「あぁ? それを決めるのはあたしじゃなくて秋人だろ! 邪魔すんな!」


 今度は仮面少女と金髪少女が言い合いになる。お互い、腰に刺された刀にいつ手を掛けてもおかしくない状態だった。

 仮面少女は自信ありげに胸を()らし、こう言った。


「私は秋人と恋人関係に等しい間柄だ。だから、私の意志は秋人の意志でもある。これでわかったな?」


「ちょっと五十嵐さん。何堂々と秋人と恋人だなんて嘘をつくんですか。それに貴方の意志が秋人の意志だなんて意味がわかりません。秋人は私のものです。髪の毛一本だろうと、誰にも渡しませんので」


 高貴な少女がすかさず反論する。


「はぁ!? 貴様、秋人が専属の護衛だからって調子に乗りすぎではないか?」


「そうですよ! いつも秋人さんと一緒にいるのにずるいです! 私も秋人さんともっと一緒にいたいのに!」


 だだをこねる巨乳少女。

 4人が言い争うお陰で、病室内は混沌としていた。


――あぁ、皆喧嘩すんなよ……。


 薬の副作用の為か声の出ない彼――秋人は、内心そう願うしかなかった。

 自分が先日の戦いで入院したというだけで、ここまで影響を与えるとは思っていなかったのだ。


――と、そこへ病室の扉が開かれる。


「あらあらぁ。随分盛り上がってるじゃなぁい」


「兄さん、大丈夫ですか!?」


「ここが病室~? 何か薬品臭いねー」


「…………」


 4人の少女達が更に病室へと入ってきたことで室内は更に混沌と化す。


「げっ、真白……」


 金髪少女が、あからさまに嫌そうな顔をした。犬猿の仲である相手と顔を合わせたからである。


「あっくんが倒れたから来てみれば……。亜理紗ちゃん、うるさすぎじゃなぁい?」


 金髪少女に向けて、不敵な笑みを浮かべたのは、まるで人形のように愛くるしい顔つきと雪のように白い肌を持ち合わせた、一見(はかな)げな少女。あからさまに敵意のある視線を送られてもなんのその、全くきにしていない様子だった。


「なんであたしだけなんだよっ。こいつらも騒いでたじゃねえか!」


「やっほーお兄ちゃん。これ、お見舞いだよ~後で食べてね!」


 秋人の顔を覗き込むようにして言ったのは、左目にかけた黒い眼帯と、腰に差した2本の刀が特徴的な少女。かつては他人を殺すことに躊躇しない冷酷で不安定な少女だったが、秋人と出会ってからは他者との交流も覚え、慕ってくれるようになった。


「ちょっとゆあちゃん。兄さんは私だけの兄さんだから、お兄ちゃんって呼んだらダメっていつも言ってるよね?」


 眼帯少女の発言に突っかかったのは、秋人の妹だ。ついこの間まではまるで仇敵を見るような態度だったのが、今ではこの通りすっかり兄さんっ子になってしまった。嬉しい反面、今までの分を埋めつくさんばかりに重い愛情を向けられるようになり、秋人は少々押され気味でもある。


「ん~ゆあわかんない」


「駄目なものは駄目なんです!」


「ふーん」


「ちょっと聞いてる!?」


 人が更に増えたことで、より騒がしくなる病室内。喋る事のままならない秋人は、ただただその様子を見ている事しかできなかった。

 そうして皆がギャアギャア騒いでいると――


――ん……?


 ふと、秋人の額にひんやりとした手の触感があった。


「熱は無いようですね。術後感染症という心配もなさそうです」


 秋人に微笑みかけるようにして優しく伝えたのは、額を少し見せるようにして止められたヘアピンが特徴的な巫女服の少女だった。絹糸のようなさらりとした長い白銀の髪は背中まで届いており、巫女にしては珍しく、袴のスカートが短いが、白いニーハイソックスで肌の露出を抑えている。

 皆が騒いでいるのを横目に見た後、彼女は言った。


「少々騒がしいですね。全く、ここが病室であるという事を皆さんお忘れなのでしょうか……? 秋人くん、ここだとゆっくりできないと思うので一旦私の神社に――」


「あ~! (おぼろ)、お前何抜け駆けしようとしてるんだよっ」


「うるさい人に感づかれてしまいました。では行きましょう」


 そうして(おぼろ)は秋人を抱き上げると、病室の外 へと飛び出した。彼女の胸元につけられた鈴がりんりんと鳴る。


「あっ、(おぼろ)! 貴様、秋人をどこに連れていく気だ~!」


「朧ちゃん、大胆~。だけどぉ、あっくんは返してもらうよ~」


 朧の後を追いかけてくる一同。しかし、彼女の圧倒的なスピードに、徐々に引き離されていく。


「そうやって皆さんはいつまでも喧嘩してるといいです! 秋人くんは私がきっちり面倒を見ますので」


 喧嘩の火種になりそうなことを言いつつ、巫女少女は秋人を抱えたまま大きく跳躍して行く。しかし、彼の事を気遣ってか、振動などは全くなく、彼女がそれほどまでに熟練していることを示していた。

 病室が遠くなるのを横目に見ながら、秋人はこうなった経緯について考える。

 ここにいる人たちのほとんどは、当初秋人の事を嫌っていた、あるいは何とも思っていなかった人達である。それが今ではかなり慕ってくれるようになった。その事はとても嬉しい事だ。

 しかし、まさがそれが自分を取り合ってこんなことになるとはつゆにも思っていなかった。


(…………)


 少女の心地よい匂いに包まれながら、秋人は過去の出来事に思いをはせていた――――。







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