表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/62

2-13/魔王様、ザ・ムービー(破):魔王少女と御使少女



『決められたコトばっかりを ダレもみんな求めてる コレをやるべきなんだって 疑いもせずクチにする』

『マチガイだって決めつけて タシカメないで見ないふり そのムコウにあるものが なんでイミナシってわかるの?』



 夜の時計塔、緊迫感溢れる場景から一転。

 主題歌が流れつつ、ムービーはキャラクターの紹介と、ストーリーを展開するものに移り変わる。


 ハイマチ=ヴィン子(CAST:666代魔王ヴィングラウド)はどこにでもいる、ごくごくフツーの、邪神を崇拝する女の子。人見知りのする性格、引っ込み思案、地味で陰気な万年ぼっち。

 一方、彼女の双子の妹であるグラ子(CAST:666代魔王ヴィングラウド/ヴィン子との兼役)は明るく元気で誰にも好かれる光属性、ヴィン子は自分とあまりに違う完璧な妹に対しコンプレックスを抱えていた。


 その日の放課後、町外れにあるお気に入りの廃城でお馴染みの召喚魔法陣を描いていたグラ子だったが、普段はまったく反応しない術式がどうしてだか成功、そこから現れたのは、【百代の魔王に仕えし偉大なる従者】を名乗る――燕尾服を着た、片眼鏡(モノクル)ヒツジのマスコット!



「ハイマチ=ヴィン子殿。貴殿が生来纏う陰キャの風格、類稀なる根暗オーラは、それ即ち魔王の資質にございます。この私、サポマス(サポートマスコット)の中のサポマス、モカ=デ=ポンコツイジリスキー六世が、あなたを、誰もが平伏する闇の支配者に育て上げてみせましょうとも!」



 かくして、冴えない邪神崇拝少女の、栄光の魔王ロードが幕を開ける。

 モカが呼び出された原因でもある、千年に一度の魔力増大現象スーパーダークムーンの影響で開いてしまったイレギュラー・ゲートを通り、町に溢れてしまったマモノたちは人に取り付き、欲望を駆り立て、騒動を巻き起こす。


 そんな連中、『ビガクもロマンもないハンパなワルモノ』をのさばらせておくわけにはいかない。

【魔王少女★ヴィンデモン】へと変身したヴィン子はそれまでの鬱憤を晴らすように大暴れし、倒した相手を【マオウのコブン】に変えていく。


 ――凄まじく背徳的な衣装で。

 ――凄まじく面積の少ない服で。


 それはまさしく反秩序の権化、何物にも縛られぬ解放感と自由の具現にして体現。

 ビキニと形容するにも憚られる申し訳ねえ布切れに、闇の衣(きわどいマント)が翻る。


 それまでの地味ダサ垢ぬけないイモっぽい服装から一転したハイマチ=ヴィン子、あれやこれやをまったく隠さず駆ける跳ねる大空を飛ぶ、カメラはそれらを絶妙に“わかっている”アングルでツボを逃さず捉え切る。

 上下左右前面背面、ズームインズームアウト接近遠景、引き出される魅力、あどけなさからふいに覗く大人っぽさ、艶やかな唇と剥き出しの肌に伝う汗。


 マモノにとりつかれた者同士の取引現場に単身突っ込み、全員を一網打尽・ローパーロープで縛り上げ、積み重ねた連中の上に生尻乗せて座り込み、ヴィン子は無垢に無邪気に爽快に高笑いする。



「魔王ってスゴいね、モカくん! ワルいことって、自分の好きなことを好きなだけ、思いっきりするのって――こーんなにキモチよかったんだッ!」


 

 向かうところ敵なし、人生闇色絶好調。

 しかし、それも長くは続かなかった。


 夜な夜な家を抜け出し、モカと共に【マオウカツドウ】を繰り返していたヴィン子の前に、それは真夜中にも関わらず、陽光の光を受け、荘厳なるラッパの音と共に舞い降りた。



「そこまでです、哀れなりし欲望の羊。これ以上の狼藉、暴走、高笑い――及び破廉恥、天と私が許しません」



 穢れなき聖なる乙女。

 純白の羽を持つ少女。


 彼女こそ、正しき加護を受けた選ばれし女神の使徒、【御使少女☆グランジェル】――そう、変身したグラ子である!

 姉が悪魔と契約したように、妹は聖霊に見出だされ、世の平和を日夜守っていたのだった!


 グランジェルは【秩序の為ではなく、自分自身の欲望の為に他者を蹴落としている】とヴィンデモンの活動を叱り、逮捕しようと迫り来る。

 光の力、聖なる力、闇の属性との相性……そして何より魔力を用いた戦闘の年季の違いが、これまで無敵だったヴィンデモンを追い詰める。


 そう、グランジェルには一切の無駄も、余分も無かった。

 重厚に着込んでいると見せかけて、その法衣にはあまりにもスキマ(傍点)がある。


 胸部には思わせぶりな【どう考えてもそこにある意味は無いのだが男性百人に聞けば誰もが必要だと断じる穴】が上にも前にも下にも開き、下半身の長いスカートには【どういう想定で長さが決まっているのかはわからないがとにかくこの構造になっていることを神に感謝する謎のスリット】が入り。


 また、後ろに回れば【羽を出すスペースが必要なのはわかるがそんな下の谷間がちょっと見えるぐらい空いていてよろしいんでしょうかと拝みたくなる背の空白】が発見され、激しい動きをすればするほど、こう、何もかもが見る者をときめかせる。


 彼女の衣装はまさしく、【無駄なものが何一つない洗練された無駄デザイン】の集大成――即ち、これこそ悪魔(露出)と天使(着エロ)、古来より連綿と続く決して相容れぬ二大勢力の激突でもあった。



「勝負あり、ですね。さあ、観念してください、魔王少女★ヴィンデモン――いえ、姉さん。反抗期も、十分に楽しんだでしょう? ごっこ遊びは終わりにして、早くおうちに帰りますよ。……あと、その破廉恥な恰好、見ているほうが赤面します。そんな服とも呼べない布を着させて、あまつさえ悪魔との契約中は身体年齢がコドモに下がるとか、マジにドン引きなんですが。これだから、闇の眷属の考えることはわけがわかりません」


「なぁっ!? は、はっ、破廉恥はそっちだろうがこのおっぱいおばけ! なんだよ天使の加護で変身すると包容力がマシマシになって身体年齢とバストサイズが上がるってばっかじゃねえの、つかさ、そっちの言い訳がきくとしてもコスチュームだわコスチューム! えっろ! えっっっっっっっっろドコもカシコも! こっちは色々テーマがあってこのカッコだけどさ、そっちはもう完全にただの性癖じゃん! 業が深いわこっちよりよっぽど! こんなん歩いてたら乱れる乱れる秩序乱れる、天が許しても地上の倫理でアウトですからーーーーッ!」



 邪と聖の代行者にして、双子の姉妹――魔王少女★ヴィンデモン&御使少女☆グランジェル。()っぱいと(きょ)っぱい。

 正反対の方向に進んだ二人の運命は絡み合い、【普通の家族】のままでは言えなかった本音をぶつけ合い、そして、物語は驚愕のラストに向けて加速していく――




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ