第04話「ダンジョン経営について」
「ダンジョンマスターは最初に、3フロアのダンジョンと3000欲望ポイントを与えられます」
出来たばかりのダンジョンは3フロア、というのは何か聞いたことがある。
「この3000ポイントでアイテムを作り、人間に来てもらえるようなダンジョンを作っていきます。もちろん簡単にアイテムをゲットされては欲望ポイントが無駄になってしまいます。だから怪物を召喚したり、罠を作ったりして、ちょうどいいダンジョンを作ってゆくのです」
なるほど。そういう仕組みだったのか。
「そしてポイントが増えてきたらフロアを追加し、もっと人間を呼び込む。本来はこのようにダンジョンを大きくしていくのです」
「ふむふむ」
「でもお姉ちゃんは最初に2950ポイントを使って、わたしを召喚してしまいました」
「ほとんど全部じゃん。なんでだよ?」
「う、だって寂しかったんだもん」
マモンが両手の人差し指を合わせて甘えるように言った。
「残り50ポイントで弱ーい怪物とアイテムを作りましたが、全然人が来ず。そして最後の1ポイントを使って賭けに出ました」
「賭け?」
「【ダンジョンマスターのミッションリスキールーレット(No007)】というアイテムを使ったのです」
「何それ。なんか嫌なネーミングなんだけど」
「モンスター追加、アイテム追加、フロア追加のどれかをルーレットで選択します。そのあと超高難易度ミッションをクリアすると無事に追加ができます。ただし失敗すると予期せぬことが起こります」
「もしかして、そのせいで俺の部屋が?」
「はい。フロアは追加できたもののジュンイチの部屋に繋がってしまいました」
「何てことだ」
「ちなみにミッションは早口言葉を言うことでした」
なんだそのバラエティ番組みたいなミッションは。
「あとちょっとだったんだけどなぁ。アカマキガミ、アオマキマミ、キマキガミ。あ、言えた」
「いや微妙に間違ってるし。まあいいや。とにかくここは地下4階ってことでいいの?」
こくりと二人は頷いた。
「今のポイントは?」
「100」
マモンがそう答える。
そうか、俺のほとばしる熱いパトスは100欲望ポイントだったのか。
「今まで作ったアイテムってのは?」
「待ってて!」
マモンが立ち上がり本棚の方に行く。俺の部屋じゃない方のやつだ。
そこから本を一冊取り出してこちらに持ってきた。
茶色い革カバーの本だ。
「今まで作ったのは、全部ここに書いてあるよ」
「見てもいいの?」
「うん」
マモンから本を受け取り、1ページ目を開いてみた。
おお、色々書いてある。
【コネクション・スーパーテレフォン(No001)】
1.日本の芸能人なら頭に思い浮かべるだけで電話をかけることができる。
2.電話をかけると、その3秒後に使用者は死ぬ
「なにこれ?」
「何って、君たち人間が夢見るお宝だけど?」
「誰がこんなもん欲しがるんだよ! しかも3秒って。呼び出し中に死んじゃうよ!」
「あう。だってこれくらい条件つけないとポイントが足りなかったんだもん」
「まあいいや、次」
【運命のダイス(No002)】
1.六面のダイス。六択以内なら、一番良いものを選んでくれる。
2.ただしダイスの使用者は3分後に死ぬ。
「またかよ! 微妙に時間が延びてるのもよく分かんないし」
「うぅ……」
「ジュンイチ、お姉ちゃんをイジメないでください。低ポイントでアイテムを作ると、こういう風になってしまうのです」
「それにしても死ぬばっかりだもんなぁ」
他のも似たようなものばっかりだった。
「まあとにかく。アイテムを作って人間を来させればいいんだな」
「はい。でも簡単に人間に持ってかれてしまってはいけません。なので怪物や罠もポイントを使って設置します」
「なるほど。ちなみに俺の部屋を元に戻すには、どれくらいのポイントが必要なんだ?」
「50000ポイントくらいかなぁ?」
多いのか少ないのか分からないな。
「ジュンイチ、ダンジョンについては分かりましたか?」
「うん、まあ」
だいたい理解はできたかな。
「一緒に頑張ろうね、ジュンイチ!」
この悪魔はなんて楽しそうな顔で笑うんだろうか。
「あぁ、頑張るよ。だって俺の部屋だし、ここ」
俺は自分の部屋を取り戻すことができるのだろうか。
こうして俺のダンジョンライフが始まるのだった。