第28話「地下16階の悲劇」
俺は10階の休憩フロア――ここにも空があり、町のようになっている――に到達した。
重要アイテム、警戒の魔石はついに見つけることができなかったが、まずまずの成果である。
ここから先、休憩フロアはない。
ノンストップで最下層まで突き進むだけである。
一体、今どれくらいの時間なのだろう。
遠くの空が少し明るくなってきている。
多分、そろそろ夜明けの時間なのだろう。
ここから先は二つの選択肢がある。
ここまで同様、1フロアづつ探索をして進む方法か。
もしくは下りの階段を見つけ次第、そのまま進んでしまう方法。
この町でまた防具を強化することができた。
盾の強さはこれで十分だろう。
アイテムはどうだろうか。
最下層までを考えると、少し足りないような気もするが。
俺は考えた結果、15階までは即降りで進もうと決めた。
13階、14階には特殊な攻撃をしてくるイヤな怪物が多いからだ。
遭遇すれば、無駄に魔石を消費させられてしまう。
「よし、あと半分だ。頑張ろう」
と自分を勇気づけ、俺は11階に進むのだった。
11階。
運よく、すぐに次の階層へ。
12階。
怪物に遭遇し、【混乱の魔石:部屋内にいる怪物が混乱する。怪物がいない場合は使用者が混乱する。】を消費する。
問題の13階、14階。
ここでも魔石を消費させられた。【睡魔の魔石:部屋内にいる怪物が眠ってしまう。怪物がいない場合は使用者が眠る。】【爆発の魔石:部屋内にいる怪物が爆発する。怪物がいない場合は使用者が爆発する。】である。
二つだけで済んだと思うべきだ。
ほとんどの挑戦者は、この辺りで脱落するんだから。
15階。
ここも消費なしで次の階層へ行くことができた。
そして。
16階。
暗い洞窟のようなダンジョンを進む。
薄暗いところに地蔵が並んでいると、ちょっと怖い。
あと4フロアで最下層。
自分でも怖いくらい順調だ。
残りの魔石は少ないが、いける。
いけるぞ。
そんなことを思った時だった。
足元でカチリと音がした。
ウゥゥゥゥ!
とサイレンのようなすごい音がした。
「…………しまった」
【目覚まし罠】を踏んでしまった。
怪物が寄ってきてしまう。
とにかくここを離れなければ、と思った時に、後ろから物音がした。
振り返る。
「ウモォォォォオオオ!」
「ひいいい!」
牛の化け物だ。手に大きな斧を持っている。
あんなので斬られたら真っ二つになってしまう。
「ウモオオオオ!」
「やめろおお!」
逃げなければ。
あいつの特殊能力で盾をぶっ壊されてしまう。
悲鳴を上げながら走り、曲がり角を曲がった。
ドン、と何かにぶつかり、俺は尻もちをついた。
「キルルルルルルル」
「ぎゃあああああ!」
人型のメカの怪物が目の前にいた。
やべえ、死ぬ。
と思った時、後ろからビョオっと音が聞こえた。
そのわずかな時間の間に、俺は
――あ、斬られた――死んだ――。
と心の中でつぶやいた。
そして次に。
――諦めるな。
と言った。
――身代わり発動!
盾にセットしていた魔石が壊れた。
【身代わりの魔石:一定時間、ダメージを肩代わりしてくれる。】が牛の怪物を肩代わりしてくれたのだ。
俺は立ち上がり、メカの横をすり抜け走ってゆく。
見えた。階段だ。
ピンチだったが切り抜けた!
階段さえ下ればこっちのもの。怪物は次の階層までは追いかけてこないのだ。
と思った瞬間。
またカチリと足元から音がした。
パン、と手を叩くような音が聞こえ、その次に目の前が真っ白になった。
キィィンと耳鳴りがしている。
――なんだ。何が起きた?
視界が徐々に戻っていく。
何か白い煙のようなものが立ち込めていた。
それに、天井が見える。
天井?
その時になって、俺は仰向けになっていることにようやく気がついた。
そして。
「ウガアアアアァァァ!」
と叫んでいた。
痛い。全身が痛い。
そうか。俺は【地雷罠】を踏んだんだ。
メカと牛の怪物もそれに巻き込まれて消えたみたいだけど、俺も相当なダメージを負ってしまった。
また遠くから足音が聞こえてきた。
「い、行かなきゃ」
俺は這いずるようにして、階段を下っていくのだった。




