第23話「マモンのプレゼント」
シリアス回です。
一体何が起こったんだ。
状況を把握できてないうちに、マモンが戻って来た。
背中に何か隠すようにしながら、ニコニコと俺を見ている。
「マモン」
「ジュンイチ。ご褒美のプレゼントだよ」
マモンは隠していた手をこちらに出した。
両手にリボンがついた小さな木箱を持っている。
「これは?」
「開けてみて」
リボンを解き、フックを外して箱を開けた。
中には鍵、そして小さなメモ用紙が入っていた。
「もしかして、アイテムか?」
「うん」
紙を見る。
【ダンジョンマスターの解除キー(No35)】
1.扉に差し込んで使う。(鍵穴がなくても使用可)
2.融合してしまった部屋を元に戻すことができる。
「これって?」
「驚いた? プレゼントだよ」
「もしかしてポイントを使ったのか?」
「うん」
愕然とする。
あの「0」の正体は、これだったのか。
「バカ!」
びくっとマモンが震えた。
「いらねえよ、こんなもん」
「…………え?」
「どうするんだよ。0ポイントになっちゃったじゃないか」
マモンは信じられないものを見たような顔をして、次に青ざめていった。
「ジュンイチが喜んでくれると思って」
「嬉しくねえよ」
「…………っ」
マモンは涙を浮かべると、こちらに背中を向け走っていった。
そのまま扉の奥へ消えてしまった。
「ジュンイチ、怒りすぎです」
アヴィが言った。
その隣ではベルフェゴールが不安そうな顔で俺を見ていた。
分かってる。
分かってるが今は無理だ。
だって「0」だぞ。
この八カ月が一瞬で消えてしまった。
怒るだろ。普通。
「頭を冷やしてくる」
俺は木箱をテーブルに置いてから、部屋を出た。
チカチカと光るクリスマスツリーが、やけに滑稽に思えた。
廊下を歩き一階へ向かう。
母は洗濯を畳んでいて、妹はテレビを見ていた。
日常だ。
日常がある。
「どうしたの? お兄ちゃん。怖い顔して」
「なんでもないよ」
「珍しいわねぇ、純一がそんなに怒るなんてねぇ。中学生以来じゃないかしら」
「…………」
シャワーでも浴びよう。
浴室へ行き、お湯を出す。
少し待ってから服を脱ぎ浴室へ入った。
頭からシャワーを浴びながら、自分の気持ちを整理した。
なぜ俺はあんなに怒ったのだろうか。
そもそも俺は自分の日常を取り戻すために、ダンジョン経営に協力していたのに。
だからマモンのプレゼントを喜ぶべきだったんだ。本当は。
だが。
あの瞬間、俺はつい怒ってしまった。
どうしてだろう。
シャワーが打つ音を聞きながら、自分の心の中で問いを繰り返す。
――いや、誤魔化すのはやめよう。
本当は分かっている。
俺はいつの間にか、あのダンジョン経営を、彼女たちと過ごす毎日を、楽しいと思ってしまっていたのだ。
部屋なんか、もうどうでもよかったんだ。
「馬鹿だな、俺は」
謝ろう。マモンに。
俺が悪かったんだ。
ちゃんと言わなかったから。
部屋なんてどうでもいいから、これからも一緒にダンジョンを大きくしていこうって。
「よし!」
シャワーを止める。
許してくれるか分からないが、とにかく謝ろう。
そして、ちゃんと伝えよう。俺の気持ちを。
服を着替え二階へ。
深呼吸をしてから扉を開ける。
マモンはもう戻ってきてるだろうか。
そう考えながら、ゆっくりと扉を開いた。
――嘘だろ。
俺の目に飛び込んできたのは、八カ月前に消えたはずの、本来の俺の自室なのだった。




