第21話「楽しい日々」
十二月一日。
ダンマス組合の出資者が集まり、ついにお宝を作ることができた。
【古強な英雄の為の地蔵(No31)】
【彷徨う英雄の為の地蔵(No32)】
【現世への扉(No33)】
【幽世への扉(No34)】
他のお宝は複数個作ってあるが、当然これらは一つだけということになる。
まさにレアアイテムだ。
「やったぁ、こんなアイテムを作ってみたかったんだよねぇ。くふふ」
「でもどうするのですか? もし元を取る前にお宝をゲットされてしまったら、他のダンジョンマスターが怒りますよ。きっともう協力してくれなくなっちゃいます」
「心配いらん。作戦は考えてあるのだ」
作戦というほどでもないけど。
「この最下層のダンジョンを迷路にして、その一番奥にお宝を置くんだ」
「迷路ですか?」
「ああ。もちろん普通の迷路じゃない。罠や怪物を盛りだくさんにするんだ」
「ふむふむ。さすがジュンイチ、悪賢いです」
「おい。褒めてるのかそれは」
アヴィがクスクスと笑った。
「でもさぁ、これじゃあ誰もクリアできないよ?」
マモンが俺のノートに書いた迷路を見ながら言った。
「だろうな」
無数に枝分かれしている通路。
その全ての選択肢を正しく選ばなければ、絶対に死ぬように作ってある。
クリア率はパトカーに轢かれるのと同じくらいじゃなかろうか。
「だから普通にダンジョンをクリアするだけなら、この迷宮は通らなくてもオッケーにする。レアなお宝に目がくらんだ人間だけをターゲットにするんだ」
「うわぁーずるい」
「いいんだよ。まさに人の欲を喰らうダンジョンらしくて、いいじゃないか」
設置すれば人は増えるだろう。
が、本当の狙いはそこじゃない。
知名度の向上だ。
階層を増やすごとに人が増えるのは、ダンジョン自体の存在を知らない人間がまだたくさんいるということだろう。
「いいなぁ、マモン。今度ボクにもジュンイチ貸してよ」
「ちょっとだけならいいよ」
「やったぁ」
物扱いされているが、気にしないでおこう。
悲しくなるから。
「あ、あの人間がまた来ました」
イケメンが来たようだ。
「またか。あの男は定期的に来るな」
「じゃあ行ってきます」
アヴィがいつものようにダンジョンへ向かう。
慣れたのか、いつの間にか面倒に思わなくなったようだ。
「じゃあわたしもお宝作ってくるね」
「あぁ、頼んだ」
マモンが続けて別の扉へ向かう。
「じゃあボクは寝るね」
「またかよ」
こいつはいつも寝ている。
「ぐう」
「うむ、今日もいいタイムだ」
ベッドに入って三秒。
好記録だ。
「俺も風呂に入ってくるかな」
部屋を出て、自宅へ。
体を洗い、湯船につかりながら、明日からのダンジョンについて考える。
レアアイテムを設置したあと、加速度的に動員数は増えていくはずだ。
20階到達もすぐだろう。
その先はまた別の困難が待っているのだろうか。
それとも――。
ふと、自分がワクワクしていることに気がついて苦笑した。
思えばこの八カ月、俺はダンジョンのことばかり考えていた。
楽しいからいいけど。
「さて、明日からどうなることやら」
やけに独り言が浴槽に反響していたのだった。




