第17話「一難去ってまた一難」
夏休みが終わり、九月になった。
俺の施策はうまくいったようで、伸び悩みは解消した。
最初の方はなかなか上手くいかなかったが、別効果の魔石やお宝、罠、怪物を追加し、バランスの良い形を構築できたと思う。
アヴィ考案の怪物待機部屋も作ってあるので、怪物の冗長性も取れている。
一日平均純増ポイントは1500。
現在の階層は地下10F。
ちなみにフロア追加は11階以上から必要ポイント数が増えるらしい。
ということで、一万ポイントにいかないようにするのも、そろそろ限界が来たようだ。
「仕方ない。一万ポイントを越えよう」
「うんうん。いよいよこの時が来たねぇ~」
俺の部屋がダンジョンの最下層になってから、はや五カ月。
なかなか感慨深いものがある。
「ダンマス組合はどうしますか?」
「うーん。利用するかどうかは別として、とりあえず参加しておくか」
「じゃあ登録しておくね」
マモンがパソコンに座り操作を始めた。
っていうかパソコンで登録するのかよ。
ダンマス組合とやらは正直あまり気が向かない。
理由は簡単で、他の悪魔と関わりたくないからだ。怖いし。
「とりあえずこのままの調子でダンジョンを大きくしていこう」
「ジュンイチはすごいなぁ。きっとあっという間に5万ポイント達成だね」
「そのとおりです。あっという間ですよ」
「あぁ、そうだな!」
三人で笑い合った。輝かしい未来を夢見て。
が、それから二週間後のこと。
さっそく次の問題が発生した。
――カコン、カコン、カコン。
またしても伸び悩みである。
――カコン、カコン、カコン。
今度の理由は単純で、献上ポイントの発生と、フロア追加の必要ポイント増加のせいだ。
――カコン、カコン、カコン。
お宝を追加すれば人は増える。が、人が増えるとフロアを追加しなくてはならない。
1フロアあたりの人数が多いと、ダンジョン側に不利なことが多いからだ。
――カコン、カコン、カコン。
かといって何もしなければ献上ポイントのせいで、ポイントが増えにくい。
そんな理由から、ちょうど2万3千ポイントくらいから、横ばいになってしまった。
――カコン、カコン、カコン。
「うるせー!」
マモンとアヴィは卓球をやっていた。
最近ハマっているらしく、うるさくてたまらない。
「ジュンイチもおいでよ。考えてばっかりだからイライラするんだよ」
「それもそうだな。悪かったよ」
ということでアヴィと交代する。
「行くぞ、マモン」
構える。
「とう!」
下回転サーブ。
「あぅ」
マモンのラケットに当たり、球は変な方向に飛んでった。
「くるくるするのやめてよ」
「このダンジョンで一等賞になりたいの、卓球で、俺は。そんだけ」
その後マモンが泣くまでポイントを重ねた。
「ぐすん」
「お姉ちゃんがかわいそうです」
「アヴィ、ジュンイチを倒して」
「わかりました。ヒーロー見参です」
ということでアヴィに交代する。
「かかってこい。アヴィ。俺は中坊のころ、卓球が趣味だったのだ」
「そうだったんですか。くすくす」
――五分後。
俺は完膚なきまで叩きのめされていた。
こうなるって分かってたけど。
涙が出そうだ。
「ジュンイチ、弱いです」
「ちっ。悪魔め」
しまった。
遊んでる場合じゃない。
どうにかしなければ。
やはりダンマス組合とやらに頼るしかないのか。
「マモン、この状況を打破したい。他のダンジョンマスターとの連携を考えよう」
「おっけ~」
マモンはパソコンの前に座り、協力者を求めているダンジョンマスターを探しはじめたのだった。