第16話「ダンジョンの改革」
「処理能力の問題だ」
マモンが首を傾げる。
「マモンが怪物やアイテムを補充するのは一日三回だろ」
「うん」
「規模が大きくなってきたことで、時間差による歪みが大きくなったんだ。これを見ろ」
ディスプレイを操作する。それは欲望ポイントの日間折れ線グラフだ。
一か月前に比べると、山と谷が大きくなっている。
「ただいま~」
スク水アヴィが帰って来た。
「おつかれ、アヴィ」
「ありがと」
「はい。それより二人してどうしたんですか?」
「うん。ジュンイチがダンジョンの問題を発見したよ」
「すごいです、ジュンイチ」
「ふっ任せろ」
話を戻そう。
「というわけで結論を言うと、怪物の補充が間に合わずに、討伐数や強奪数が増えてしまっている。ということだ」
「ふむふむ。どうすればいいの?」
「マモンが一日に補充する回数を増やせば解決だな」
「えっ。やだ」
即答された。
「頑張れよ」
「だって。どんどん増えていくだけじゃん。きりないよ」
「む」
たしかに。
「では怪物を余分に召喚しておいて、待機させておくのはどうでしょう」
「ほほう」
いい手だ。
だがマモンの言ったように、ダンジョンを大きくしていくことを考えると、それもいつか限界がくるだろう。
抜本的な解決策を考えなくては。
要するに怪物の討伐数自体を抑えればいいのだ。
小型エアコンの法則はもう通用しないのかもしれない。
少し考えてから
「仕方ない。怪物の数は変えずに、強さを変えよう」と言った。
「強さ?」
「うん。そうすれば倒れされる回数は減るはずだ」
「来る人が減っちゃわないですか?」
「その代わりにダンジョン限定アイテムを追加する。武器と防具にセットする魔石を投入するんだ。人間でも怪物を倒せる猶予をそうやって作ってやる」
「ほほう。ジュンイチは頭がいいのね~。おりこうさん」
マモンが俺の頭をなでた。
砂がパラパラ落ちてきた。砂を落としてこいよ。っていうか俺は犬か。
「実はだいたい考えてあるんだ」
魔石をセットできるスロット数と攻撃力・防御力はトレードオフの関係にする。
そして魔石は永続タイプと使い切りタイプを二種類用意してやる。
俺は机にしまっていたノートを取り出し彼女たちに見せた。
二人は興味深そうにそのノートを見つめた。
「ふーん。よく考えてあるねぇ」
「まあな。あとは様子を見て追加していこう」
とりあえずこれで怪物にも対抗できるだろう。
今後は怪物の数は一定。討伐数と強奪数はアイテム数で調整する。
というわけで、マモンにアイテムを作ってもらい、その後に期待をするのであった。
以下、ジュンイチのノートより
【武器】
とら:スロット8
ことり:スロット7
きく:スロット6
しぐれ:スロット5
むらさめ:スロット4
てん:スロット3
まさむね:スロット2
【防具】
赤の盾:スロット8
橙の盾:スロット7
黄の盾:スロット6
緑の盾:スロット5
青の盾:スロット4
藍の盾:スロット3
紫の盾:スロット2
【魔石:エンチャント】
必中の魔石:命中率向上
会心の魔石:クリティカル率向上
刃の魔石:前方へ範囲攻撃が可能になる。
回復の魔石:回復力向上
俊敏の魔石:回避率向上
警戒の魔石:怪物警戒力向上
炎の魔石:アンデッド系にダメージアップ・炎属性軽減
冷の魔石:ビースト系にダメージアップ・冷属性軽減
雷の魔石:機械系にダメージアップ・雷属性軽減
風の魔石:飛行系にダメージアップ・風属性軽減
【魔石:インスタント】
成長の魔石:セットした武器または防具の強さが上がる
不幸の魔石:セットした武器または防具の強さが下がる
識別の魔石:魔石を識別できる。
癒しの魔石:怪我が回復する。
毒の魔石:体力が減少する。
力の魔石:一定時間、力が向上する。
身代わりの魔石:一定時間、ダメージを肩代わりしてくれる。
混乱の魔石:部屋内にいる怪物が混乱する。怪物がいない場合は使用者が混乱する。
睡魔の魔石:部屋内にいる怪物が眠る。怪物がいない場合は使用者が眠る。
爆発の魔石:部屋内にいる怪物が爆発する。怪物がいない場合は使用者が爆発する。