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第15話「とある夏の1フロア」

マモンとアヴィが海で遊んでいる。

マモンは普段着に似た水着を、アヴィはスクール水着を着ていた。


「いきますよ、お姉ちゃん」

「いいよー」

「それっ」


今はボールで遊び始めたようだ。

穏やかな波の音をBGMに、俺はそれをぼんやりと眺めていた。


なんてのどかな光景なのだろう。

ここが俺の部屋だったということも忘れてしまいそうだ。


「ジュンイチもおいでよ。一緒に遊ぼう」

「いいよ、俺は」

「ちぇー」


どういう仕組みなのか分からないが、俺たちの部屋に突然ビーチができてきた。

天井が半分壊れ、そこから青い空が見える。


その下には砂浜。そして水平線まで続く大海原。


めちゃくちゃだ。


今は八月。

夏休み真っ只中。


俺たちのダンジョンは地下9階まで成長していた。


フロアを増やしたことで、二つの変化があった。


まず欲望ポイントの増加。

一人あたりの欲望ポイントが増えたのだ。ダンジョンにいる時間が長くなるほど、ポイントは増えていくらしい。


そして動員数の増加。

推測になるが、弱小ダンジョンに興味のなかった層を取り込めたということだろうか。「なろう」では階層数を見てお宝の内容を見ずにスルーしている人もいるようだ。


そんなこともあり順調に思えたのだが、9階を追加した(厳密には8階を割り込ませた)途端、突然ポイントが伸び悩み始めた。理由はまだ分かっていない。


彼女たちが遊んでいる間、俺はその原因を探る為ディスプレイと睨めっこをしていた。


「うーん、分からん」


フロア増加に合わせてお宝も追加しているし怪物も追加している。

アームの弱いゲーセン理論は適用されないはずだ。現に人は増えている。

討伐数とお宝の強奪率が上がっているのだ。


何故だ。


怪物数と人数の比率は変えていない。


だいたい一日に来る人数と同じくらいの100ポイント怪物がいればよいのだ。

あとはそこへ200ポイント怪物も投入している。


小型エアコンの法則とでも名付けようか。

これが一番バランスがよいのだ。


考えていた時に、ふとディスプレイ変化が現れた。


「これは……」


まただ。

討伐数が増えている。


慌ててディスプレイを操作したところ、あのイケメンが再びこのダンジョンに訪れていた。


「アヴィ! あのイケメンが来たぞ」

「えぇ~またですかぁ?」

「退治してきてくれ」

「もぉ~」


牛みたいな声を出しながらほっぺを膨らませた。

アヴィは文句を言いながらもスク水のままダンジョンへ向かって行った。


それから数分後、ディスプレイの中でアヴィとイケメンが対峙し、イケメンは煙になって消えた。今回もパイルドライバーで沈められていた。


アヴィがすぐに退治してくれたものの、また少なくない被害が出た。


「くそ、なんなんだあいつは」


一体何を求めてこのダンジョンへ来てるのか分からんが、奴はプロハンター。

さぞご立派な目的があるのだろう。いい迷惑だ。


「まあまあ怒らないの」


いつの間にかマモンが近くまで来ていた。

タオルを肩にかけている。


早くこの伸び悩みを解消しなければ。

もしまたイケメンに来られるとマイナスになる。


「テレビでも見よぉっと」

「呑気だなぁ~」


マモンはテーブルの上に置いてあった眼鏡をかけてからテレビをつけた。

あの眼鏡はマモンが考えたアイテムだ。


どんなテレビでも3Dで見ることができる。


あれで3人で一緒に映画を見たけど、中々の迫力だった。

気にいったのでお宝としてダンジョンにも置いた。


マモンがザッピングしていた時に、ふいに何かが俺の脳裏をよぎった。


「ちょっと待て!」

「何よ?」


マモンからリモコンを奪いチャンネルを変える。


テレビでは大家族特集がやっている。


「これは……」

「すごいね。一日に五回も洗濯機を回すんだって」


そうか。


「分かったぞ。伸び悩んでた原因が」


人数が増えてきたことで、ダンジョンにもう一つ変化が起きていたことに、俺はようやく気がついたのだった。

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