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第09話「セーラー服とお地蔵さん」

一週間後。

俺とマモンはソファに座りテレビの画面を見つめていた。


「おじさん、許して。お願い……」

「ハァ、ハァ……。おじさんにそれ、渡してくれるかなぁ」

「いや……」

「ね、いいコだから。ほら、おじさんに」


アヴィが走り出した。それを後頭部の薄くなったおっさんが追いかける。

薄暗いダンジョンに二人分の足音が響く。


地蔵を抱えて走るセーラー服の美少女と、それを追いかけるハゲのおっさん。


シュールだ。


「おぉーすごいすごい。欲望ポイントがきたぞー」

「いいぞ、アヴィ! お前は逸材だ。きっといい女優になるだろう」


アヴィが角を曲がる。

おっさんはそれを追いかけたが、転んでしまった。


【転び罠】が発動したのだ。

走っている時にだけ発動するタイプの罠だ。


「よぉし! 撤収、撤収だぁ!」


マモンが叫ぶ。すると画面の中のアヴィが頷いた。

しばらくするとアヴィが俺たちの部屋へ戻って来た。


「疲れました」

「お疲れ。よかったぞ、アヴィ」


画面の中ではおっさんがキョロキョロしながらアヴィを探している。

その手には刀が握られていた。


俺の考案したダンジョン限定で使えるアイテムの一つだ。


武器、防具を六種類づつ作成した。

それぞれに設定した攻撃力、防御力がある。


そして工夫をしたのは魔石を入れるスロットを設けたことだ。


魔石をセットすることで、様々な特殊効果を武器や防具に付加することができる。

ただしそんな魔石はこのダンジョンに一つもないけど。


だがとりあえず今はこれでいい。

大事なのは、攻略できそうだ! このダンジョンは挑戦者のことを考えてくれているんだ! という演出である。


「だいぶポイントが溜まってきたぞ、ジュンイチ。今300ポイントだ」

「よしよし。軌道に乗って来たな」


徐々にダンジョンに来る人が増え始めた。

主にアヴィの演技のおかげだ。


ちょっと変態っぽい男が多い気がするが、気のせいということにしておこう。

マモン曰く、普通より何故か欲望ポイントが多めらしいが、それも気のせいだ。


「では目標の300に到達したのでアイテムを追加する」

「ジュンイチ。もう次のアイテムを考えてるのか?」

「あぁ。任せておけ」

「ジュンイチ、わたしのアイテムはまだですか?」

「もうちょっと待っててくれ」

「忘れたらイヤですよ」

「分かってるって」


アヴィは一番の功績者だ。

余裕ができたら、ちゃんと作らせてあげよう。


「では次のアイテムを発表する。見よ!」


俺はノートを彼女たちに見せた。


【小さき英雄の為の地蔵】

1.お祈りすると身長が伸びる。

2.ただしお金をお供えしなくてはならない。

3.1cmにつき五百万円が必要(現在価値)。

4.お供えしたお金は消えてしまう。

5.地蔵を毎日掃除しないと、身長は元に戻ってしまう。


【豊かな英雄の為の地蔵】

1.お祈りすると体型がスリムになる。

2.ただしお金をお供えしなくてはならない。

3.1Kgにつき百万円が必要(現在価値)。

4.お供えしたお金は消えてしまう。

5.地蔵を毎日掃除しないと、体型は元に戻ってしまう。


「また地蔵? なんで?」

「なんとなく一個目を地蔵にしちゃったからな」


方向性は間違っていないはずだ。

ハゲだけではなく、チビとデブも呼び込めると想定している。


「ジュンイチ。わたしはお地蔵さんを三つも持って走れないですよ」

「一個だけでいい。遠くからなら、どれだか分からんだろ」

「他の二個はどうするのですか?」

「ここに隠しとく」


と俺は自分の足元を指さした。


「ここはダンジョンマスターの部屋だから、人間は入ってこれないよ?」

「だからいいんじゃないか」

「そんなのズルだ」


悪魔のくせにズルが嫌いらしい。

マモンはほっぺを膨らませている。


「マモン、心を鬼にするんだ。いいか。バレなきゃイカサマじゃあねえんだぜ」

「さすがジュンイチです。悪魔にはできないことを平然とやってのけますね」


褒められる気がしないけど、まあいいや。


「人間が可哀想だよ」

「いいんだ。ポイントが目標に達成したら代わりに地蔵をくれてやろう」


次の目標は1000ポイントだ。

ゴールデンウィークまでに達成できるだろうか。


こうして俺はダンジョン経営に勤しむのだった。

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