シリーズ管理をしてくれと頼まれたのでしてみたがタイトルが浮かばない
ほら、これでおしまい。
第9王子なのに王位継承権は第3位。
ただし、その地位は仮初めのものである。
それを聞いたのは8歳の時。
兄上達は自分よりも優秀で、年の離れた皇太子殿下に至っては兄というより父のような存在だった。
仮初めとはいえ王位継承件を持つものとしての心構えを植え込まれ、幼馴染みは全て側近候補や婚約者候補であることに疑問を持ちつつも与えられた役割をこなしていた。
『ただ、少しでも兄上を助けることができるならばそれで良い』
そう思って教えられることを必死で学んだ。
私は優秀なのだそうだ。
覚えも早く、理解力に優れ、その上で柔軟性も持っている。
学園に入る前の家庭教師にそう言われた時は正直どうでもよかった。
ただ、学園に入ると見えてくるものがあった。
側近候補達と自分との違い。そしてそんな異質な自分と肩を並べる婚約者候補でもある公爵令嬢。
駄目だと思った。
このまま自分の能力を示せば示すほど自分の意思とは関係なく王位争いを巻き起こしてしまう。
許せなかった。
建前だと、お飾りだと散々自分を影で貶めていた者達が地位を目当てにすり寄ってこようとする。
そんなつもりはない!と一喝しても堪える様子はなく、潰しても潰しても消えることはない。
あげくには皇太子である1番上の兄上にまで噂が届き、内密に話す場を設け、弁明する羽目となった。
疎ましかった。
自分がどれほど努力しているのかを見ようともせずに日々、人の顔色を伺うようになってきた側近達が。
執行部役員と通常の課題をこなすのは彼らにとっては大変なことなのは理解していた。
だが、自分はその上で兄が王位を継いだあとに任されるだろう業務や人材の把握、すり寄ってくるもの達への対処など様々な案件が押し寄せてくる。
彼らに構ってやる時間など無かった。
そんなある日、執行部に行くと公爵令嬢が側近達の机の上の書類を処理していた。何故そんなことを?と問うとあまりに書類が溜まっおり滞っている業務が何個かあるため、ついでに他のものも処理をしているとのこと。
余計なことだとは思ったが、業務に差し障りが出ているのは問題だし、彼らにこれ以上寝食を削れというのも酷な話だ。
4年になって少し時間に余裕ができていたのもあって、令嬢と一緒に処理を終わらせた。
そして、それが崩壊の始まり。
その日から彼らは執行部に寄り付かなくなった。
朝晩の迎えや教室での授業にはきちんと参加するが、執行部に来ることはない。
そして、下級貴族の男爵令嬢をあからさまに構い始めた。
元々は自分に対して気兼ねなく声をかけてきた彼女を威嚇していたはずの彼らが、たちまち彼女の虜になった。
自らの家や婚約者、何よりも今までの努力を無駄にするような行為に、驚き呆れたが少し羨ましくもあった。
誰にも言えないが自分は恋物語を好んで読んでいる。
そんな、おとぎ話の中の王子になりたい。という子供のような願望を彼女は叶えてくれたのだ。
純粋に自分を慕い
盲目ともいえる愛情で自分を縛る
その、甘美な誘惑にいつしか自分も捕らえられていった。
駆け足にすぎていく日々。
彼女と過ごす日々は全てが色づいて見え、手放したくないと思った。
その裏で、彼らが蠢いていることには気づいていたけれど、自分と彼女の関係を邪魔しないのであれば問題ないと、放置していた。
彼女に構うことで滞る執務も、生徒達からの冷たい視線も、令嬢からの忠告も。全てがどうでもよかった。
ただ、この1年。限定された時間の中で彼女と少しでも多く触れあいたいだけだった。
そんな、自分の中にあった純粋な彼女への愛情と、彼女を逃げ場として利用している自分と。
2つの感情の中で揺れ動いていたのは確かだった。
だから彼らからもたらされた情報を確認もせず、令嬢に詰め寄った。
全てが終わったあと、連行された先には父と兄上がいて、初めて叱責を受けた。
涙が出るほど嬉しかった。
あぁ、自分は誰かに構ってほしかったのだな。
と、そう思った。
だから物怖じなく話しかけてくる彼女にあれほど執着していたのだ。
審議の末、このことは内密に処理されることになった。とはいえ、卒業パーティーという場でしでかしてしまったことは消えることはない。
ほとぼりが覚めるまでは軟禁され、落ち着いたらどこかに婿として出されることが決まった。
「お前には、俺を手伝って貰いたかったのだけどな」
ドアが閉まる前に聞こえた兄上の呟きに、またひとつ、涙がこぼれた。